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1. はじめに

前回メルマガ記事を書いた4月の段階で、ビットコイン価格は、1BTC=76万円前後でしたが、その後、価格は上昇し、5月から6月にかけて、上下しつつも、概ね、1BTC=100万円超となりました。

 

その後、100万円を割ることもありましたが、この記事を書いている時点(2020/06/17)では、1BTC=102万円で推移しています。

 

2. リブラ等の最近の動き

 

さて、今回は、これまでにメルマガに書いたリブラ、の延長線上の話として、「デジタルドル」について触れたいと思います。

 

前提としまして、最近の動きなどを、ざっくりとまとめてみます。

 

これまでも記事にしたとおり、Facebookが主導して提唱した仮想通貨「リブラ」は、残念ながら、(特に、法定通貨を脅かすものとして、中央銀行の不興を買ったためか)各方面から袋叩きにあいました。

 

そこで、Facebook(リブラ)側としては、方針の修正をアナウンスしており(https://libra.org/en-US/white-paper/#cover-letter)、具体的には、(セキュリティを強化することはもとより)法定通貨と11で対応するステーブルコインを発行する計画を公表しました(https://libra.org/en-US/white-paper/#cover-letter)。

 

要するに、1ドル払って、1ドルリブラ、みたいな仮想通貨(ないしステーブルコイン)を貰える、という計画のようです。

 

但し、従前の仕組み(複数の通貨のバスケットにリンクするリブラ)も、諦めてはいないようで、既存の仕組みに「加えて」("in addition to")、上記のような仕組みを追加する旨、説明がされています。

 

リブラに関して、以上の状況をどう評価するか、人によって判断が分かれるところですし、将来的にどうなるかは分かりませんが、正直なところ、現段階で、批判を受けて、ほぼ頓挫している印象を受けます。

 

他方、リブラを尻目に、中国のデジタル人民元の計画は、着々と進んでいるようで、深センなどの一部の都市で、テスト運用を実施するとの報道がされています。報道の中で、興味を引いたのは、デジタル人民元は、インターネット環境がなくとも、スマホ同士で通信して、送金することができる仕組みを備えるそうです。まだ、テスト段階の話であり、今後もその機能が維持されるのかは分かりませんが、素朴な疑問として、果たして、それってセキュリティ的にどうなんだ?マネロン対策とかもできるの?などと思ってしまいます。

 

3. デジタルドル

 

さて、人民元をデジタル化しようという話があるのであれば、やはり、米ドルをデジタル化しよう、という話もあります。ちなみに、最近では、そういった、中央銀行が発行するデジタル通貨をCBDCCentral Bank Digital Currency)と呼んでおり、報道などでも、よく使われる単語となりつつあります。

 

この点、米政府としてはCBDC発行に慎重な姿勢のようではありますが、最近、ちょこちょこと気になる動きがありました。


まず、民間の話ではありますが、米国商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長(J・クリストファー・ジャンカルロ氏)が、「デジタルドル財団」という財団を設立し、アクセンチュア社とともに、ドルのデジタル化の設計・推進を推し進めています(デジタルドルプロジェクト。https://www.digitaldollarproject.org/)。

 

最近では、ホワイトペーパー(目論見書)などを出してニュースになりました(https://www.digitaldollarproject.org/exploring-a-us-cbdc)。

 

ここまでは、単純に、民間団体によるドルのデジタル化に関する提言、といったレベルの話です。しかし、最近では、米議会の下院において、金融サービス委員会の公聴会が開催され、デジタルドルに関して議論もされています。前記デジタルドルプロジェクトのジャンカルロ氏も参考人として参加しています。

 

デジタルドルプロジェクトの動きは、要するに、技術的仕組み等々は、民間レベルで提言するから、政府はそれを採用して、ドルのデジタル化を進めてくれ、ということと思います。

 

これに対し、中央銀行側はどう反応したかといえば、そっけない反応です。すなわち、報道によれば、連邦準備制度理事会(米国の中央銀行に相当)のパウエル議長は、617日の下院委員会で、官民協力によるデジタルドルの設計について、否定的見解を示したとされています。

 

ただ、他方で、FRBは、これまで、デジタルドルの可能性を研究しきているとのことで、前記17日の委員会においても、パウエル議長は、CBDC(デジタルドル)は、真剣に研究していく案件の1つ、とも発言しています。

 

正直なところ、FRBとして、どこまで研究を進めているのか、どこまで発行に向けた具体的計画が進んでいるのか(あるいは進んでいないのか)、等々、ベールに包まれた部分が多いです。ただ、報道によれば、パウエル議長は、「待たせすぎるのも問題になる」という意味深な発言もしているようで、ひょっとすると、裏で、発行計画が着々と進んでいるのかもしれません。

 

このように、リブラに端を発して、中国のデジタル人民元、EUデジタルユーロ、そして、アメリカのデジタルドル、と、どんどんと波紋が広がっているようです。

 

ちなみに、日銀も、欧州中央銀行(ECBその他の銀行とともに、CBDCについて研究をするなどしています(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200121a.htm/)。

 

あと10年もしたら、今を振り返って、「リブラの発表が、法定通貨の歴史的な転換点であった」などと言われるようになるのかもしれません。

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さて、今回も、Facebookのリブラ絡みの話をしたいと思います。

リブラについては、各界からの猛烈な批判にさらされるなどして、先行きが不透明になっているところですが、他方、リブラに対抗して、中国やEUなどが国レベルで独自の電子通貨を発行するといった兆しがあり、(良くも悪くも)世界的に影響を与えているように思います。

少々、経緯も複雑になってきたところですので、ここで、一度、私見を交えて、これまでの経緯のおさらいをしつつ、新たな動きについてもご紹介してみたいと思います。

 

(1) リブラの公表

まず、今年の618日、Facebookが、リブラ(Libra)という仮想通貨を公表しました。このリブラは、決済手段として、つまり、物やサービスの対価として、この仮想通貨を使えるようにしよう、というものです。また、世界中の約半数の人が銀行口座を持っていない状況にあり、これに対処するのが、リブラの課題であるなどとされています(https://newsroom.fb.com/news/2019/06/coming-in-2020-calibra/)。

さて、このリブラですが、正直なところ、技術的に物凄く新しいというものではありません。仮想通貨としては、既にビットコインがあり、現状でも、ビットコインで物を買ったり、サービスの提供を受けたり、といったことは、(ビットコインを受け入れているお店は少ないものの)実際にあります。

また、リブラは、裏付け資産を有して、価格を安定させることを志向しているようです。しかし、そういった、価格を安定させる、いわゆるステーブルコインの仕組みも既にあります。そもそも、リブラ自体、価格変動が全く無いわけではなく、むしろ、価格変動が存在することが前提とされています。

 

 

(2) リブラへの批判

 このように、正直なところ、それほど目新しいとは言えないリブラですが、公表された後、各界から大きな反響があり、端的にいって、袋叩きにあっています。例えば、

・米議会では批判的な声が強まり、公聴会なども開催されました。その中では、マネーロンダリングやテロ資金に使われるといった批判が出ています。また、Facebook側は、アメリカの規制当局の完全な承認を得た上で、Libraをリリースする、といった発言をするに至っています。

G7でも、名指しでリスクが指摘され、「最も高い水準の規制を満た」さなければならないなどとされています(https://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g7/cy2019/g7_20190719.htm)。

・さらに、EUに関しては、フランスとドイツが、リブラのリスクを批判する共同声明を出すなどしました(https://g8fip1kplyr33r3krz5b97d1-wpengine.netdna-ssl.com/wp-content/uploads/2019/09/Joint-statement-on-Libra-final.pdf

 ここで個人的に引っかかることは、なぜ、今、リブラがこんなに叩かれるか、ということです。この点、マネーロンダリング云々のリスクがあるというのは確かかもしれません。しかし、それは、リブラに限った話ではありません。仮想通貨の元祖・ビットコインなどでも同じことです。しかし、ビットコインは、(日本などで一定の規制は設けられたものの)全世界で流通しています。少なくとも、リブラのように、袋叩きにあって、流通もできないような状況にはありません。

 そのため、(リスクがあるにせよ)なぜ、今、マネロン云々のリスクがあるからといって、リブラがそれ程までに叩かれなければならないのか、違和感を覚えます。

 これに対しては、色々な見方があろうかと思いますが、個人的には、リブラの参画メンバーに一因があるように思います。具体的には、まず、リブラを主導するFacebookに関しては、過去、個人情報流出の事件を起こしてマイナスイメージがあることが挙げられます。ただ、それ以上に、今回のリブラに関しては、当初、VISAやマスターカード(なお、後に離脱を表明)など、著名な企業が参画しており、実際に、決済手段として普及するかもしれない、という可能性が生じたからではないか、と感じます。

 

 仮想「通貨」が、決済手段として普及するかもしれない、というのは、いわば、当たり前のことです。しかし、現実には、残念ながら、例えば、ビットコインについては、主に、投資・投機の手段として使用され、決済手段としての利用は、少ない状況です。そのため、(あくまで私個人の感想ですが)今までは、関係各所もそれほど問題視してこなかったところ、Facebookが、「決済手段として普及させるのだ」といって、豪華な参画メンバーを引き連れて登場したことに対して、関係各所が焦っている、といった印象を受けます。

 そして、「関係各所」として一番考えられるのが、銀行、特に、政府ないし中央銀行ではないかと思います。仮想通貨が、真に、決済手段として普及すれば、極論、銀行はいらなくなってしまいます。さらに普及が進めば、法定通貨もいらなくなってしまうかもしれません。中央銀行から見れば、リブラは、自らの地位を脅かす危険な存在、と写るように思います。 

 また、(あくまで可能性の話であり、現段階では、少々妄想じみてはいますが)リブラが目標として掲げた、

  世界中の約半数の銀行口座を持っていない人

がリブラを使うようになれば・・・、場合によっては、世界の基軸通貨が(ドルではなく)リブラになってしまうかもしれません。少なくとも、リブラの影響力は、非常に大きいものになるでしょう。これは、米国だけではなく、他国も見過ごせないように思います。

 

(3) 中央銀行発行によるデジタルマネー

 

 リブラの公表後、中国は、デジタル通貨(人民元)を発行することを計画している(なおかつ、既に、発行準備段階にある)、といった報道が数多くなされました。要するに、政府が、法定通貨をデジタル化した仮想通貨を発行してしまおう、ということです。

 中国において、研究自体は、昔から行っていたようですが、現状、リブラを意識して準備を急いでいるように見えます。中国のデジタル人民元が、どういったものになるのか、まだ、全貌は分かりませんが、場合によっては、リブラに代替するものになる可能性も考えられます(もちろん、リブラとは全く違うものになり、また、全然普及しない、ということになるかもしれませんが。)。

 ちなみに、最近の動きとしては、中国の国会にあたる全国人民代表大会において、デジタル人民元発行に向けた準備として、仮想通貨に関する新法が可決された、などと報道されています(https://jp.reuters.com/article/china-crypt-idJPKBN1X7015)。

 

 また、前述のとおり、EUにおいては、フランスとドイツが、リブラを批判する中で、欧州中央銀行が、公的なデジタル通貨に取り組むよう、働きかけるといった共同声明を出しました(https://g8fip1kplyr33r3krz5b97d1-wpengine.netdna-ssl.com/wp-content/uploads/2019/09/Joint-statement-on-Libra-final.pdf)。この点については、進展があるようで、最近では、EUとして、正式に、欧州中央銀行(ECB)に対し、公的なデジタル通貨発行の検討を提言する見通しであるといった報道がされています(https://jp.reuters.com/article/eu-libra-idJPKBN1XF2IW)。

 

(4) G7のその後

 

さて、前記のとおり、G7は、リブラに批判的です。この点、G7では、(実質的にはLibraを主眼としつつも)広く「ステーブルコイン」について作業グループを設けて、これまで調査・検討が行われてきました。

その結果、先月、(前回のメルマガ記事作成後)、以下のような報告書などが出されました。

G7作業グループによる報告書

https://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g7/cy2019/g7_20191017_02.pdf  

・ステーブルコインに関するG7議長声明(財務省による日本語訳)

https://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g7/cy2019/g7_20191017.htm 

 

この中で、上記議長声明では、以下のようなリスクが指摘されてます。

 

・法的確実性

・健全なガバナンス

・マネーロンダリング、テロ資金供与及びその他の違法な・金融活動

・決済システムの安全性、効率性及び公正性

・オペレーションの頑健性やサイバー耐性

・市場の公正性

・データのプライバシー、保護及び移転可能性

・消費者や投資家の保護

・税務コンプライアンス

 

これを踏まえて、「法律上、規制上及び監督上の課題やリスクに十分な対応がなされるまで、いかなるグローバル・ステーブルコインもサービスを開始すべきではない」とされています。 

要するに、リブラはリスクがあるから、現状、発行はNGということです。さもありなん、といったところです。

ただ、ちょっと気になった点として、上記議長声明では、以下のようなコメントもされていました。

「規制に加え、公的権限や通貨主権の中核的要素の維持は勘案されなくてはならない。」

これは、個人的には、かなり本音の部分なのかな、と感じます。要するに、中央銀行や中央銀行が発行する法定通貨の地位は守られなくてはならず、リブラはこれを脅かす可能性があるから危険である、ということかと思います。そもそも、G7とは、「7か国財務大臣・中央銀行総裁会議」ですから、中央銀行の仕事を奪ってしまう可能性があるリブラについて、(その当否は別として)批判的である、ということは頷けます。

 

(5) 総括

 

 以下、私なりに現状を総括してみたいと思います。

 

 リブラについては、マネロン云々のリスクもありますが、各国政府・中央銀行の視点で見れば、自らの立場や、法定通貨の地位を脅かすリスクがあるように思います。

 そのため、アメリカを含めて、政府や中央銀行は批判的です。実際に、リブラは、アメリカを含めて、各国から袋叩きにあっています。

 他方で、リブラに焦りを感じた中国やEUでは、国レベルで法定通貨を電子化して(デジタル人民元や、デジタルユーロの発行して)、リブラに対抗しようと動いているように思います。リブラに覇権を握られないよう、自分たちがデジタルマネーを発行してしまおう、ということです。

 これによって、当初、リブラvs米政府(+他国政府・中央銀行)という構図だったところに、中国とEUが参戦し、三つ巴ならぬ、四つ巴のような、複雑な構図になっています。

 ここで、やはり気になるのが、米国の動きです。米国では、リブラへの対抗策の1つとしては、米国での銀行決済を24時間年中無休にする、といった案が出されているようですが(https://coinpost.jp/?p=116936)、現状、EUや中国のように、国レベルのデジタルマネーのような構想は出てきていないようです。

 ただ、米国としては、リブラだけではなく、中国やEUのデジタルマネーも敵になりうるような状況かと思います。そのため、単にリブラが危険だからといって、リブラを潰せばいい、という状況でもなくなっているのではないかと推測します。このような状況に対し、米国の次の一手が気になるところです。すなわち、

 

 ・米政府として、デジタル米ドル、のような構想を打ち出すのか

 ・ないしは、リブラを規制下において、背後からコントロールしつつ、リブラを推進してゆくのか

 ・はたまた、これら以外の対抗策を考えるのか(ないしは、リブラも、デジタル人民元も、デジタルユーロも、結局は、今の米ドルへの脅威ではないとして、米国としても何もせず、リブラに対する批判・規制の方針を貫くのか)

 どのような結果になるにせよ、今後の進展について、気になるところです。いずれにしても(リブラが実現するにしろ、しないにしろ)、リブラが投じた一石は、非常に大きなものであったと感じます。

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