夫又は妻が相手方(つまり妻又は夫)と離婚したいのに、話し合っても離婚の合意に至らない、つまり協議離婚ができない場合、それでも離婚したければ、家庭裁判所で離婚調停をしなければなりません(調停前置主義。家事事件手続法257条)。調停でも離婚の合意ができず、それでも離婚したければ、離婚訴訟をすることになります。
 

ところで、離婚調停では、調停を申し立てられた相手方(夫または妻)が、おうおうにして調停期日に出頭してくれない、ということが起こります。そもそも、任意の話し合いで離婚に応じなかった相手方ですので、裁判所における話し合い(調停)も拒否するというのが主な理由のようです。調停では、調整役の調停委員が、申立人と相手方の間に入って話し合いを進めてくれますが、最終的に、申立人と相手方の双方が、離婚に合意しなければ調停は成立しませんので、相手方が期日に出頭してくれなければ、手続き自体が無駄に終わってしまうことになります。

 

この点、法的に説明すると、一般的に、調停を申し立てられてた相手方には、調停に出頭する義務があると解釈されており、正当な理由がなく出頭しない当事者に対しては、家庭裁判所が5万円以下の過料(罰金みたいなものです。)を課すことができます(家事事件手続法第258条第1項、第51条第3項)。しかし、私の経験上、家庭裁判所が、この過料の制裁を発動したケースを知りません。おそらく、裁判所としては、そこまで「おおごと」にするよりも、離婚訴訟の方に移行してくれということなのでしょう。裁判所によっては、書記官から相手方に電話をするなどして出頭を促していただけるときもありますが、裁判所によって運用はまちまちであり、また、そのような電話があっても出頭しない相手方もいます。

 

では、そのような場合はどうするか?というと、結局、調停を不成立(不調)にさせて、速やかに、離婚訴訟を提起するしかないと思っています。離婚訴訟では、被告が欠席していたとしても、手続きを進めることは可能であり、裁判官が、原告提出の証拠により、「離婚事由」(民法第770条第1項)があると判断すれば、離婚の判決を得ることができます。

ちなみに、少々専門的になりますが、離婚訴訟では、通常の訴訟とは異なり、被告(相手方)が答弁書も提出せずに欠席した場合に、訴状に記載した原告(申立人)の主張した事実について、認めることが擬制されるという擬制自白の制度はありませんので(人事訴訟法第19条第1項)、被告の不出頭が見込まれるときでも、離婚原因(民法第770条第1項に規定されている不貞行為、悪意の遺棄など、婚姻関係を継続しがたい事由のことです。)について、しっかりした証拠を提出しておく必要があります。

 

というわけで、結論としては、相手方が調停に出頭しなくても、調停を不調にして離婚訴訟を提起し、最終的には訴訟で「離婚事由」の存在を立証することで離婚することができます。