私は、2005年12月から2007年2月までの1年2ヵ月間、当時在籍していた西村あさひ法律事務所から東京商工会議所内の東京都中小企業再生支援協議会に出向させていただき、同協議会のサブマネージャーをさせていただきましたが、その時、中小企業再生について1から教えていただいたのが、同協議会の統括責任者をされていた藤原敬三さんでした。その後、藤原さんは、中小企業基盤整備機構内に設置された中小企業再生支援協議会全国本部の統括責任者になり、長らく中小企業再生支援協議会の現場のトップとして活動されていましたが、この10月に統括責任者の地位を後進に譲り、自身は顧問となって、一歩引いたところから中小企業再生支援協議会にアドバイスしていくとのこと。その藤原さんが、かつて自分が手掛けた案件を振り返り、また、協議会の手続きを利用した社長等にインタビューをして回ってまとめたがのがこの本です。

中小企業再生支援協議会の手続は、秘密裡に進められるため、実際どのように行われているのか外からはよくわからないのですが、この本は、著者の藤原さんが易しい語り口で手続きがどのように進められるのか、各案件の勘所はどんなところにあったのかを説明してくれます。藤原さんが手がけた5つの案件が取り上げられていますが、どれもエピソード満載で、小説やドラマ、映画にしたら面白いだろうなと思える内容であり、とても興味深かったです。

中小企業再生にとどまらないと思いますが、企業の再生のためには、債権カットなどの財務面だけではなく、事業自体の改善がとても重要であることや、(同協会で行われている手続の対象者が金融機関だからということもあるかもしれませんが)金融取引や銀行のことを良く知っていることがポイントだということが良くわかります。

経営が苦しい中小企業の社長さんのみならず、弁護士・税理士・会計士、コンサルタントといった再生にかかわる専門家必読の書だと思います。

是非、ご一読ください!


なお、藤原さんが書いたより専門的な本として、「実践的中小企業再生論」があります。この本は書式まで網羅されていて非常に有益な本です。藤原さんによると、改訂版の計画が進んでいるとのことですので、こちらにも期待したいですね!