オワハラ。明確な定義はないですが、内々定や内定を餌に他社の就職活動を「オワ」(終わ)るように圧力をかけるといった問題です。

 

経営者の皆さまに対して私が今更申し上げるまでもないことではありますが、会社は、人、人材が命といっても過言ではありません。

いかに自社にとって良い人材を確保するのか、ということは経営上極めて重要な課題です。少し前に出たものですが、Googleの人事(採用等)に関する書籍もすごい人気でしたよね。

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良い人材を確保するためにという一心で、「自社にぜひ来てほしい。(が故に)他社の就職活動は終わってほしい。」という気持ちを抱いてしまうこともわからなくはありません。むしろ、その気持ちはとてもよく理解できます。

このオワハラに関して、会社側が、社会通念上の相当性を逸脱するような態様(例えば、脅すなど)で圧力をかけ、強要する行為が行われた場合には、内定者の職業選択の自由を不当に侵害したものとして、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになりうると考えられます。ただし、法的な問題として顕在化するのはほんとに限られたケースのみであると思います。

ここで問題になるのは、こういう法的なリスクというよりも、レピュテーションリスクの方が大きいですね。

今や、SNSで、会社側の対応は、かなり拡散されていきます。「○○会社から、○○で○○って言われた。オワハラ、マジ必死すぎwww」なんて、つぶやかれて拡散されていったら、会社は社会的に概ねマイナス評価を受けるでしょう。

オワハラではなく、他に工夫を行っていく必要があると思います。やはり、同業他社に比べて、入社したい、と思わせる施策を打てるかが必要であると思います。内々定や内定を出した後にも、ポジティブに思ってもらえるようなフォローをしたり(他に就職活動をさせないようにがんじがらめにフォローするとネガティブなので要注意)、そもそも内々定や内定を出すときに熱いメッセージで思いを伝えるなど。

採用プロセスには時間も費用も労力もかかりますので、そう簡単ではないのは重々承知していますが、それでも、「自分が納得するまで就職活動を続けてもらって構わない。そのうえでぜひうちに来てほしい。」と言える方がきっと好印象です。

 

ここで今回のメルマガも終わり、とも思いましたが、一応「法律問題を少しだけ考えてみた」というタイトルに名前負けしないように、内定辞退について考えてみます。内定者が、内定辞退をする場合に、会社に対して損害賠償責任を負うのかどうかという問題です。会社側からみると、内定辞退者に対して損害賠償請求できるのか、という問題です。

内定辞退の法的性質は、労働契約の解約と考えられます。労働契約の解約については、法律上、労働者の自由が保障されており(民法6271項)、労働者は法定の予告期間(原則2週間。完全月給制の場合には当月の前半まで。年俸制の場合には3か月前まで。同条1項ないし3項)をおいて解約をする限りにおいて法的責任は負わないと考えられています。

ちなみに、民法改正法案は、同条2項および3項を使用者からの解約の場合に限定して適用するものとし、労働者からの予告期間は一律2週間とするものとなっています。

また、内定辞退の事案ではありませんが、会社が、退職者に対して、入社後1週間で突然退職したため、これにより損害を被ったとしてその賠償を請求した事案において、「そもそも、期間の定めのない雇用契約においては、労働者は、一定の期間をおきさえすれば、何時でも自由に解約できるものと規定されている」ことから、遵守しなかった予告期間中の損害についてのみ責任追及できると判断された裁判例があります(ケイズインターナショナル事件 東京地裁 平4.9.30判決 労判61610ページ)。

以上からすると、内定者が入社予定日(始期)の前日を基準として遅くとも2週間前まで(見解が分かれるかもしれませんが、始期が到来していないため、完全月給制又は年俸制にかかわらず、このように解し得ると思われます。なお、前記の民法改正法案にも留意)に内定を辞退する旨通知した場合には、就労義務も消滅し(または発生せず)、会社に対して何ら法的責任を負わないと考えられます。

例外的に、内定辞退が、著しく信義則に反する態様でなされた場合には、内定者は新たな採用活動に要した費用等の損害を賠償する責任を負うと解されますが(菅野和夫『労働法 第11版』226ページ、土田道夫『労働契約法』186ページ)、内定者が会社に損害を与える目的で内定辞退をしたような限定的な場合にのみ「著しく信義則に反する態様でなされた」と評価されると考えておくべきでしょう。