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派遣法の改正案が再び国会に提出されました。

 

(2015年3月14日日経新聞朝刊5頁から)

政府は13日、派遣法社員に同じ仕事を任せる期間の制限を事実上なくす労働者派遣法の改正案を閣議決定し、国会に提出した。企業は派遣社員を活用しやすくなる。同時に派遣社員が雇用上の不利益を被らないように、派遣社員に対して派遣社員が期間終了後も働き続けられるように対応することを義務づけた。

9月1日の施行を目指す。ただ野党は「一生派遣につながる」として強く反対し、これまで2回廃案になっている。塩崎恭久厚労相は13日の閣議後の会見で「3度目の正直で成立させたい」と強調したが、閣議は難航が予想される。

 (私の感想)

私自身は、

① 日本の労働者派遣は、「正社員が本則で、派遣は一時的・臨時的な働き方」という位置づけで作られており、実務的には、「正社員の解雇が厳しく制限されているため、経済的な負担が大きくても雇用調整をしやすい派遣を使う」という発想で使われ、職場における正社員と派遣社員間の差別(同じ仕事をしているのに待遇が違う)を助長する方向で機能している。

② しかし、「正社員が本則で、派遣は一時的・臨時的な働き方」という位置づけ自体がおかしい。専門職などでは会社単位に働くよりも、案件・仕事単位で働く方が適している場合があり、そういう場合には、派遣は一時的・臨時的な働き方ではなく、恒久的な働き方とも位置付けられる。

③ また、雇用調整の必要性があるから派遣を増やす(雇いやすくする)という発想もおかしい。そもそも日本の社会および企業は、従業員を定年までずっと雇えるほどの体力がなくなっているのだから、雇用調整の必要性は、(派遣を増やす方向ではなく)一定の補償のもとで、正社員の解雇制限の規制を緩める方向で検討されなければならない。


という考えを持っています。

 

ところが、今回の派遣法の改正は、これまでの正社員と派遣社員の区別(雇用調整のための派遣)を前提としつつ、一方で、企業側で派遣を使いやすく、他方で派遣労働者側の立場にも配慮するというもので、そもそも問題の根本である正社員の解雇制限の問題に手をつけていません。したがって、私のような考えを持っている者からすると、この改正は、中途半端というべきもので、若干ひややかな目で見ています。

ただ、最近、竹中平蔵氏が、上記と同様の趣旨の発言をしたところ、ネット等でかなり叩かれましたので、おそらく、このような考え方は、まだまだ少数派なのでしょう。現状では、ドラスティックな制度変更は望めません。

 

だとすれば、問題のある現状を少しでも改善していく方向で考えなくてはなりません。

いずれにしても、労働法制は我が国の成長性を高めるうえでとても重要な分野ですので、国会で、今国会では実りある議論がなされることを望みます。 

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(豆シリーズ、今週は夏らしく「枝豆」です。)


本日は、【豆知識16日目~20日目】をお届け致します。 

【豆知識 16日目】 相続人に対する株式の売渡請求ってなんですか?

株式譲渡制限会社では、定款で定めることにより、株主に相続が生じた場合、相続人に株式を会社に売り渡すよう請求することができるようになったよ。会社の経営が創業者の二代目、三代目に移ると、株式も一族に分散しがちになるから、中小企業にとってはとっても嬉しい制度だよね。事業承継のプランニングでよく使われてるよ。

 

【豆知識 17日目】 株式譲渡制限会社における新株発行は?

株式譲渡制限会社では、募集株式の発行は、株主に平等に割り当てるのが原則で、それ以外は、株主総会の特別決議が必要になるよ。これに対して、株式譲渡制限会社以外(公開会社)では、著しく低い価格による発行でない限り、取締役会決議のみで募集株式の発行が可能なんだ。だから経営陣の暴走を防ぐ意味でも、中小企業は、株式譲渡制限会社にしなくちゃね。

 

【豆知識 18日目】 株券はどうなっちゃったの?

会社法施行前は、定款に定めがない限り、株券を発行するのが原則だったけど、会社法施行後は、定款に株式を発行する旨の定めがない限り、株券を発行しないのが原則だよ。だから、株式といっても、株券があるわけではないので注意してね。

 

【豆知識 19日目】 額面株式ってまだあるの?

昔は、50円株とか500円株とか5万円株とか額面株式といわれるものがあったよね。でも、でも、今は、会社法が施行される前の平成13年から、既に、株式には無額面株式しかないんだよ。株券が発行される場合でも、株券には券面額の記載はなく、株式数のみ記載されるんだ。もうずっと前から「額面」というのは、会社法上はあまり意味のない概念なので覚えておいてね。

 

【豆知識 20日目】 裁判所には労働専門部があるの?

霞が関にある東京地裁(本庁)には、民事事件を扱う部が「50」もあるんだ(ちなみに大阪地裁は「26」)。このうち、労働事件を専門的に扱うのが、第11部、第19部、第36部の3つだよ。労働関係に関する主な訴訟のほか、労働関係保全(仮差押えや仮処分)事件、労働審判等を扱っているんだ。
 

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(労働法といえば、菅野和夫教授のこの本。我々もいつも参照させていただいております。)


1.はじめに

パート、アルバイト、契約社員、高齢者が多い会社(今多くなくても将来多くなりそうな会社)にとっては、この4月1日(平成25年4月1日)から、とても影響の大きい労働法制の変更が2点あります。
 

1つは、パート・アルバイト・契約社員のような有期労働契約による労働者について、5年経過後には、労働者側の希望によって無期労働契約への転換できる制度の導入(無期労働契約への転換制度)です。

もう1つは、(実質的)65歳定年制の本格導入です。

2.無期労働契約への転換制度

これは、有期労働契約が繰り返し更新され、通算5年を超えたときは(ただし、施行日である平成25年4月1日以後の日を契約期間の初日とする有期労働契約から適用-同日以降に更新されるものも含むので注意。)、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールのことで、労働契約法第18条1項に規定されます。

厚生労働省のパンフレットによれば、「有期労働契約で働く人の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を繰り返し更新している実態にあり、その下で生じる雇止めの不安の解消が課題となって」いたことから、「こうした問題に対処し、働く人が安心して働き続けることができる社会を実現するため」に、このような制度が導入されることになったようです。

私の認識としては、会社側が有期労働契約を選択しているのは、景気の波や会社の業績の変動に応じて、雇用調整をしたいという強いニーズがあるにもかかわらず、正社員(無期労働契約で働く人たち)を解雇することが法律によって厳しく制限されているため、有期労働契約で雇用調整をしている(つまり短期の有期労働契約を締結し、景気や業績が悪くなったら、解雇ではなく、契約期間が終了したからという理由で辞めていただく。)との理解でしたので、雇用調整をしたいという会社側のニーズの方に何らの手当てもせずに、このような制度を作ることは、かえって5年を超える契約更新をしない(つまり無期労働契約に返還されるような有期労働契約をしないようにする)という選択を会社側に促すようなもので、有期労働契約者の地位は今以上に悪くなる可能性があるのではないかと心配します。

しかし、いずれにしても既に成立してしまった法律であり、約2週間後の4月1日からこの制度が導入されるので、会社側(特に、パート、アルバイト、契約社員などの有期労働契約者が多く、かつ、繰り返し更新されている会社)では、真剣に対応を考えなければなりません

対応としては、次の2つの方向性が考えられます。

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