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6月29日の参院本会議で、いわゆる「働き方改革関連法」が成立しました。

残業代の上限規制や、同一労働同一賃金制度の導入、またいわゆる高度プロフェッショナル制度の導入が柱となっており、労働基準法や労働契約法等の複数の改正された法律を、一言で「働き方改革関連法」と呼んでいます。

残業代の上限規制についてですが、現行の労働基準法が規定している労働時間は、18時間、週40時間となっており、この時間を超えて労働者を働かせるためには、いわゆる36協定を労使間で締結する必要があります。

36協定を締結した場合は時間外労働が可能になりますが、今回、時間外労働について以下の上限規制が設けられました。

・月45時間、年360時間まで

・臨時的な特別な場合があっても、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)まで

従来までは、厚生労働省が時間外労働の限度に関する基準の告示を出してはいましたが、今回その基準が法律に格上げされ、罰則による強制力を持たせることになりました。

これにより、行き過ぎた時間外労働に歯止めをかけることが期待されています。

もっとも、①1ヶ月100時間の時間外労働又は②2ヶ月~6ヶ月の間に1ヶ月80時間を超える時間外労働については、健康障害リスクが高まるという基準(いわゆる過労死ライン)があり(基発第1063号・https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11a.pdf)、今回規制された上限はこの基準に近いものになっています。

そのため、この上限規制の範囲内であっても、健康障害リスクは皆無とはいえず、果たして今回の上限規制が十分な基準と言えるかどうかは正直難しいところだと思います。

また、長時間労働の是正のために、今回新しく年次有給休暇の強制付与制度も設けられました。これは、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうち5日について、毎年、使用者は時季を指定して与えなければならないとされました。 

この制度の対応策として、今まで会社が任意に定めている夏季休暇や冬季休暇を所定休日とするのではなく、これらの休暇を有給休暇として取り扱うことで、この年次有給休暇の強制付与制度をしのごうとする会社もあると予想されます。

このような有給休暇の入れ替え行為は、現時点でも会社が労働者に無断で進めてしまうこともあると思いますが、このような行為は年次有給休暇の計画的付与(労基法第39条第6項)に当たるので、労使協定が必要になりますので注意が必要です。

「働き方改革関連法」の成立の背景には、労働人口の減少、長時間労働、少子高齢化等の様々な問題があり、問題の種類によっては解決法が相矛盾するものもあるので(ex.労働人口の減少と長時間労働)、これらを一挙に解決することは簡単ではありません。

また、何をしようとしても抵抗勢力が出てきますので、抜本的な解決は難しいところです(人間自分が一番なので、内容によっては私も抵抗勢力側につくことになるかもしれません)。

今後「働き方改革関連法」の柱である同一労働同一賃金制度や高度プロフェッショナル制度についても、検討していきたいと思います。

 弊事務所では、破産した会社の財産管理・分配等を行う破産管財案件を扱っていますが、未払賃金の立替払制度の利用を申請する機会が多くあります。今回はこの未払賃金の立替払制度についてご紹介します。

 そもそも、未払賃金の立替払制度は、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、未払賃金の一部を政府が事業主に代わって立替払する制度で、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づいて独立行政法人労働者健康安全機構が実施しています。
 そのため、企業が倒産してしまい従業員に給与が支払われていないという状況が起きた場合には、この制度の利用を検討することになるのですが、利用には一定の条件があり、次のような労働者や労働債権についてしか立替払が実施されません。

対象労働者の範囲(全て満たす必要があります)

①労災保険の適用事業所で1年以上事業活動を行っていた事業主に雇用されており、倒産に伴って賃金が支払われないまま退職した労働者
②裁判所への破産手続開始等の申立日等の6ヶ月前の日から2年以内に当該企業を退職した労働者
③未払になっている賃金等の額について破産管財人等の証明等を受けた労働者

→事業主の事業活動期間が1年に満たない場合や、労働者が破産等申立日の6ヶ月前よりも前に退職している場合、未払になっている賃金等の金額について破産管財人や清算人等から証明を受けられない場合などは、立替払を受けることができません。

対象労働債権の範囲

①賃金台帳や就業規則、給与明細等によって客観的に認定できる範囲の定期賃金・退職金
②上記のうち、退職日の6ヶ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来しているもの

→賃金額について会社が何も資料を残しておらず、労働者側にも資料がないという場合には立替払が難しいことがあります。また、未払期間が退職日よりもあまりに前の場合は、その期間分は立替払の対象に含まれないことになります。

 細かく言えばもっといろいろな条件があるのですが、立替払条件は概ね上記のようになっており、独立行政法人労働者健康安全機構が破産管財人等から提出された資料を精査して上記の条件を満たしていると判断した場合には、認定額の8割について立替払を実施します。
 ただし、立替払金額には年齢に応じて上限があり、30歳未満の労働者は88万円、30歳以上45歳未満の労働者は176万円、45歳以上の労働者は296万円とされています。
 そのため、賃金を支払われない状態で長期間働いていた労働者や賃金額が高い労働者については、この上限に引っかかってしまい、実際の債権額よりも相当低額の立替払しか受けられない場合があるので注意が必要です。

 また、立替払までにかかる期間ですが、立替払の実施までには、①破産管財人等が賃金に関する資料を集めて未払賃金額を算出、証明書を作成→②労働者が立替払の申請書を作成して提出→③労働者健康安全機構が審査、という過程を辿るため、破産開始決定が出てから立替払の実施までに2~4ヶ月程度がかかってしまうことが多いです。

 以上のように、立替払の対象労働者や対象労働債権の範囲に制約があるほか、立替払額の上限もありますが、本来倒産してしまった企業からは回収できない可能性が高い部分についても立替払いしてもらえるため、この制度は労働者にとって強い味方です。ぜひ覚えておいていただければと思います。

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