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今年の41日から、労働契約法第18条に規定されている無期転換ルールが開始されました。
まだ始まったばかりなので、実際に無期転換の申込みがどの程度行われているのか、使用者と労働者との間で何らかの問題が生じている等の報告やデータは集まっていませんが、今後使用者と労働者との間で生じるおそれのある問題を挙げていきます。

①業務形態の偽装

有期雇用契約から無期雇用契約に転換できるいわゆる「無期転換申込権」は、労働者側にイニシアチブがあるので、無期転換申込権の行使を防ぎたいと考えている使用者がいるかもしれません。
無期転換申込権は、有期労働契約が通算5年間を超えた場合に発生しますが、「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約」であることが前提なので、無期転換申込権が発生しないように、間に派遣会社を入れて派遣契約にシフトすることや、請負契約にチェンジすることが考えられます。

すなわち、派遣契約にすれば、使用者は派遣会社になるので、「同一の使用者」との間で有期労働契約を締結していることにはならず、この場合には形式的には無期転換申込権は発生しないようにも思えます。
しかし、そもそも派遣契約では特定目的行為(派遣労働者を特定する行為)は禁止されているところですが(労働者派遣法第26条第6項)、形式的に使用者を変えるだけの行為を行ったとしても、結局通算契約期間の計算上の「同一の使用者」とみなされることになると解されます。
(厚生労働省・平成24810日付基発08102号「労働契約法の施行について」では、このような行為は「法を潜脱するもの」であると指摘しています。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002hc65-att/2r9852000002hc8t.pdf)

また、仮に請負契約にチェンジしたとしても、「労働者性」の有無は、あくまでも実質的に判断されますので、実態としては労働契約であるとして、「同一の使用者」との間で有期労働契約があったとみなされることになるでしょう。

②無期転換申込権の不行使条項

無期転換申込権の行使を防ぐために、有期労働契約に無期転換申込権の不行使を定めることや、無期転換申込権の不行使を契約更新の条件にして更新することが考えられます。

労働者が同意をしているのだから許されるのではないか、というわけにはいかず、雇止めを恐れる労働者の足元を見て得られた同意であり、実質は使用者が無期転換申込権の放棄を強要しているに過ぎないと裁判所にみなされる可能性があります。

このような行為は、結局労働契約法第18条の脱法行為であり、無期転換申込権の不行使条項や、更新の条件である無期転換申込権の不行使条件は、公序良俗に反して無効になると解されます。

③無期労働契約の労働条件の低下

労働者が無期転換申込権を行使すると、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)になるに過ぎず、その他の労働条件は従前と同一となります。

もっとも、期間の定め以外の労働条件を変更することは可能であり、労働契約法第18条も「別段の定め」があれば可能であると明記しております。この「別段の定め」は、就業規則や労働協約、個別の労働契約が該当します。

この部分を利用して、事実上無期転換申込権の行使を防ぐために、例えば無期転換行使後に適用される就業規則が、従前適用されていた就業規則の労働条件から著しく低下するような内容にすることが考えられます。

結局そのような就業規則は、労働契約法第18条で無期転換申込権を定めた趣旨を没却するものとして、就業規則に要求されている合理性を満たさず(労働契約法第7条)、当該就業規則の適用がなされないと考えられます(それ以外の既に規定されている就業規則のほうが適用される)。

無期転換ルールが開始された今、なんとか無期転換申込権の行使を防ぎたいと考えている方がいるかもしれませんが、立法経緯からすると現状では難しいと思います。
無期転換ルールについては、上記の想定される問題や、その他の問題が生じる可能性があり、今後もその動向に注目していきたいと思います。

更新が遅れてしまい大変恐縮ですが、このブログでも取り上げさせていただいた(政府から国会に提案され、今国会で審議されていた)労働者派遣法の改正案が、6月20日に廃案となることが決定いたしました。

その理由は、罰則規定について「1年以下の懲役」と書くべきところを、「1年以上の懲役」と間違って記載してしまったため、野党から「国会軽視」という反発があり、修正ではだめで、新らたに提出しなおすべき、ということです。(同時に、有期雇用の上限を5年から10年に延ばす有期雇用労働者特別措置法も継続審議となりました。)

政府は、今回廃案になった労働者派遣法の改正案を次期国会に再度提出する方針とのことですが、2015年4月としていた施行日を先延ばしする可能性があるとのことです。

労働者派遣法の改正案の内容については色々議論があるところなのですが、ただ明確な誤記を理由に廃案にしてしまうのもいかがなものか、という感想を持ちました。

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