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 今回は、法律の話から離れて、司法試験とその合格者の現状について、お話ししたいと思います。

 

 法曹になるための仕組みは、今から15年前の2004年に大きく変わりました。
 いわゆる法科大学院(ロースクール)ができたのがこの年で、それまで、司法試験は基本的には誰でも受けられる試験だったのですが、法科大学院卒業者が出る2006年以降は、原則として、法科大学院を卒業しなければ、司法試験を受験することができないことになりました。
(※厳密には、2006年から2011年まで、誰でも受験できる旧司法試験と、法科大学院卒業者しか受験できない新司法試験とが併存していたのですが、この点は置いておきます。現在は、新司法試験のみになっていて、原則として法科大学院卒業者しか司法試験を受験できなくなっています。)

 

 旧司法試験は、誰でも受験できることもあって、受験者数が多く、合格率が低い試験でした。法務省のまとめを見ると、2次試験(法的知識の試験)の受験者数が毎年約20,00045,000人なのに対し、合格者数は毎年約5001,000人で、合格率は3%前後でした(http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/press_071108-1_19syutu-gou.html)。
 一方、新司法試験は、受験資格に制限があるため、受験者数が少なく、合格率は高い試験です。受験者数は毎年約8,000人なのに対し、合格者数は毎年約2,000人で、合格率は23%前後になっています。
 旧司法試験は、受けるまでは簡単で受かるのが難しい試験、新司法試験は、受けるまでが難しく受かるのは(比較的)簡単な試験、という感じでしょうか。司法試験と聞くと、まだまだ旧司法試験のイメージが強いので、新司法試験の合格率を聞くと驚かれる方も多いかもしれませんね。

 

 ところで、この(新)司法試験、ここ数年でガクッと受験者も合格者も減っています。

2014年: 受験者8,015人、合格者1,810

2015年: 受験者8,016人、合格者1,850

2016年: 受験者6,899人、合格者1,583

2017年: 受験者5,967人、合格者1,543

2018年: 受験者5,238人、合格者1,525

2019年: 出願者4,930人【参考】

 

 2015年までは、受験者数8,000人を概ね維持していたのですが、2016年から急激に減り始めました。
 そして、次回、20195月に予定されている司法試験は、出願の時点で5,000人を切っているので、受験者は4,000人強と予想されます。今までの合格率を維持するのであれば、合格者は1,000人前後といったところでしょうか。悲しいことですが、近年の法曹不人気を如実に表していると思います。

 

 一時期、急に弁護士の数が増えたことによって、弁護士の就職難が起きていると取り沙汰されましたが、それも今は昔。図らずも司法試験合格者が減って(減らさざるを得なくて)、新人弁護士の数が減っているため、今はむしろ売り手市場と言っても良いような状況になりつつあります。

 

 最後に、司法試験合格者が、その後どのような道に進むか触れておきます。
 現在、一番フレッシュな法曹(候補)は、201812月に司法修習を終えた71期司法修習生になりますが、71期司法修習生の進路は次のとおりです。(参考:https://www.jurinavi.com/market/shuushuusei/shinro/index.php?id=211

 

司法修習修了者  1517

判事任官者      82

検事任官者      69

弁護士登録者    1267

(うち、東京三会登録716人、五大事務所登録194人、組織内弁護士登録52人)

未登録者        99

 

 特徴的なのは、弁護士登録者の半分以上が東京に登録すること、少なくない人数がファーストキャリアに組織内弁護士を選ぶこと、五大事務所が採用数を大きく伸ばしていることかと思います。

 

 72期以降は、更に司法修習修了者が減っていくはずなので、特に東京以外の事務所や東京でも小規模の事務所の新人採用競争は、どんどん厳しくなるだろうと予想されます。
 一方、企業等の組織に入るという道は、弁護士の進路として確立されてきている印象ですので、資格保有者の採用を考えている企業にとってはチャンスかもしれません。

 
 今回は、興味のある人にはある、司法試験の現状をお伝えしました。
 何らか皆様のお役に立てれば幸いです。

昨日(9月10日)の日本経済新聞の朝刊の記事ですが、「司法試験合格 239人減」という見出しで、

法務省は9日、2014年の司法試験に1810人が合格したと発表した。昨年より239人減り、06年以来8年ぶりに2千人を下回った。合格率は4・2ポイント減の22・6%で、現行試験が始まった06年以降で最低だった。法科大学院を修了しなくても受験資格を得られる「予備試験」経由の合格者は163人、合格率は66・8%で、どの法科大学院よりも高かった。


と報道と報道されています。
弁護士の人数とも絡む問題なので、私としても心情的に複雑な問題なのですが、次のように考えています。

1.弁護士の人数を増加させる司法制度改革は、弁護士の経済的地位を悪化させ、不祥事を起こす弁護士を増やすとともに能力の低い弁護士を増やしたとして(弁護士内部からは)とても評判が悪いのです。
しかし、国民の側から見れば、弁護士の偏在がなくなり、弁護士のコスト(弁護士報酬)が下がり、さらに弁護士を企業や地方公共団体内部で雇用できるようになりました。法律の専門家に対するアクセスが格段に容易になり、法化社会化という面でもかつての状態よりも良くなっているのではないかと思います。
統計をとってみたわけではありませんが、私の印象では、不祥事を起こす弁護士は、最近になって経済的に苦しくなったベテランの先生方の方が相対的に多いように思いますし(したがって、どちらかというと懲戒制度の問題でしょう。)、若手弁護士の能力の問題は、我々の若いころと五十歩百歩という感じがしないでもありません。むしろベテランの弁護士にもかなり怪しい人がいますね(研修制度の問題かもしれません。)

2.弁護士の人数の増加により、(私を含め)大部分の既存弁護士の収入は減少しましたが、それは競争が始まると報酬を下げざるを得ないような付加価値の低い仕事、または方法で仕事をしているからであるように思います(もちろん、本当に社会的弱者のために、いわば手弁当で仕事をされている一部の先生を除く。)。
そもそも弁護士になったら一定の収入が保証されるかのような発想は間違いです。
クライアントから高い評価を受け、苦しい外部環境の中でも高い収入を維持している事務所・弁護士も存在しておりますので、基本的には、資格で稼ぐのではなく、良いサービスを提供して、クライアントから評価してもらって稼がなければならないと思います。

3.法曹人口の問題は、今は増加の反動で減少に向かいましたが、他業界で規制緩和が叫ばれている中で、弁護士業界だけが独占の利益を享受できるというのは一般の理解を得られないように思いますので、(弁護士法72条の問題も絡んできますが)、人数としても、いずれ増加の方向に向かうでしょう。
また、経済学的に考えると、その社会にとって最適な弁護士数は、基本的には市場原理によって決められるべき問題ですので、入口のところで制限してしまうのは適当ではありません。
したがって、私は、逆に、法科大学院を卒業すれば、基本的に弁護士資格を与えて良い(司法試験のハードルを低くしても良い)のではと考えています。
もっとも、前述のとおり、弁護士資格を持っているからといって、就職や収入が保証されるわけではありません。人数が増え、競争が起きますので、クライアントから評価されないと、食べていけない人もいるでしょうし、逆にバリバリ稼ぐ人もいるでしょう。
でも、それは他の職業でも同じことだと思います。

こういうことを言うと、自分にはねっかえってくるので厳しいのですが、私は以上のように考えています。

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