淡路島の蔭山文夫弁護士のブログで知りましたが、(大阪弁護士会所属の弁護士のみに認められるようですが)三井住友銀行が、債務名義を有する債権者から、弁護士法23条の2に基づき本店に照会を受けた場合、債務者が預金口座を有する支店名、回答日現在の残高を回答していただけるとのことです。正式には次のとおり。
従前、預金債権差押え準備のため、各金融機関本店に対し、債務者が預金口座を有する支店等について回答を求める23条照会(「全店照会」といいます。)が行われてきましたが、多くの金融機関は、顧客の秘密保護、預金者の承諾が得られないこと等を理由に回答を拒否していました。
当会は、不当な回答拒否であるとして金融機関に書面により申入れすると共に、株式会社三井住友銀行との間で、全店照会に対する回答を得られるべく協議していたところ、今般、民事執行法第22条に定める 債務名義(ただし第5号公正証書を除く。)を取得した債権に基づいて、所定の様式に従い、債権差押命令申立てのため全店照会を行った場合には、債務者が預金を有する支店名、回答日現在の残高等について迅速な回答を得られることとなりました(ただし、賦課金とは別に債務者1名につき同行に対する手数料3,000円(消費税別)が必要です。)。本年7月1日より上記取扱いが開始されますので、ご案内いたします。
いやいやこれは、画期的なことです。
従来、判決を得ても、債務者の口座情報を把握することができず、判決が絵に描いた餅となることが多々ありました。民事執行法には財産開示制度というものがありますが、実際には機能しているとは言い難い状況ですし、弁護士法23条の2の照会にも、金融機関側にはこれに応じる義務があるのに罰則規定がなく、照会をした当事者が拒否した金融機関に(民事的に)損害賠償請求をしても、「弁護士会に対する義務であって照会をした当事者に対する義務ではない」などと裁判所はわけのわからない論理を展開して、個々の弁護士としては、金融機関に対して、回答を強制することができなかったのです。そのため、我が国の裁判制度は、権利が保障されているとは言い難く、〇チャンネルの創業者のように、裁判所を無視して多くの敗訴判決を受けながら、平気な顔をして生活できてしまう者も現れるようになりました。
このような状況は、金融機関にとっても究極的にはよくない状況でしょう。自分たちも債権者となって強制執行することがあるのに、その実効性がひくく、結局、債権をサービサー等に廉価で売却しなければならなくなります。
さらに、権利が法的に実現できないということになると、人々は、その他の手段(ヤクザ等々)で実現しようとするわけで、社会的にも嘆かわしい状態です。
そのような状況で得をするのは、支払えるのに財産を隠して支払わない債務者と、不当な手段を利用して権利の実現を図ろうとする人たちだけです。

私は、大阪弁護士会と三井住友銀行の英断を称賛します。(私が属する)東京弁護士会をはじめ、他の弁護士会にも金融機関との協議をしてほしいですし、他の金融機関にも応じていただきたいと思います。
現在、債務者の口座情報を調べるには、興信所に10万円以上を支払って、グレーな情報を得るしかないわけですが、それに比べれば1件手数料1万円支払ってもいいのではないでしょうか。

弁護士会には、変な政治活動はやらなくてよいので、こういう活動を是非お願いしたい。