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弊事務所では、馬場悠輔弁護士が第一東京弁護士会の宇宙法研究部会に入って勉強していますが、「宇宙法っていったい何なんでしょう?どういう仕事なのかな?」などと思っていたら、昨日(2018年3月19日)の日本経済新聞夕刊ニュースプラスの頁の「人間発見」に西村あさひ法律事務所の水島淳弁護士のインタビュー記事が掲載されており、宇宙法の仕事について紹介されていました。

(以下、記事からの抜粋)
「2017年12月、宇宙開発ベンチャーのispace(アイスペース、東京・港、袴田武史社長)が、産業革新機構、KDDIなど12社から第三者割当増資により101億円を調達した。「シリーズA」と呼ぶ技術開発段階の調達としては国内最大で、宇宙ビジネスへの期待の大きさがうかがえます。
 私は、この投資スキームの検討や契約交渉を助言しました。アイスペースは出資企業と組み、月面での水資源開発を目指しています。同社は月面探査に使う探査機を開発中で、15年に7キログラムだったものを4キログラムまで軽量化しました。打ち上げコスト削減につながる軽量化は、探査に使う機器を開発するうえでの重要課題のひとつです。」

「17年3月、アイスペースはル苦戦ブルグ政府と、宇宙資源の共同開発に関する覚書を交わしました。前年の5月、私は同社の袴田社長らと同国を訪れ、1年近くかけて交渉を助けました。」

(私のコメント)
宇宙開発などというと、SF映画を思い出し、どうも現実味がありませんが、この記事にあるように、既に弁護士が宇宙に関する法律や契約のアドバイスをするような時代になっており、そう遠くない将来、宇宙法の分野も確実に発展していくのでしょうね。記事によると、2018年秋に日本でも宇宙開発の規制を定めた宇宙活動法などが全面施行になるとのこと。我々もこの流れに乗り遅れないようにしなければなりませんね。

堀江貴文氏が創業者であり、役員も務めているインターステラテクノロジズ社が、観測ロケットの「MOMO」を730日に打ち上げました。

MOMOは全長10m、重さ1トンで、目標高度の100kmには約4分で到達できる能力を持つ観測ロケットだそうです。

打ち上げ当日は、多数の報道陣が集まっていましたが、MOMOは打ち上げ後、高度約20kmに達した時点で緊急停止した末に、沖合に落下してしまいました。

目標の100kmには遠く及ばず、打ち上げは“失敗”だったという声が叫ばれています。

 

しかし、MOMOは、地上から緊急停止コマンドを送るまで正常に作動していたらしく、また今後のロケット開発に多くの情報を提供して貢献するでしょうし、本当の意味での失敗とはいえないと思います。今回の打ち上げは、まだまだ民間企業のロケット打ち上げが一般的ではない中での打ち上げであり、しかも低価格でコンパクトなロケットというコンセプトを持って臨んでいる、いわば挑戦です。そのため、今回の打ち上げは、失敗ではなく今後の宇宙開発にとって大きな一歩になることは間違いないでしょう。

堀江氏やインターステラテクノロジズ社の方々には、まだまだ挑戦し続けて欲しいと思います。

 

ところで、今回のMOMOの目標高度である「100km」ですが、なぜ100kmかというと、高度100kmの空間は宇宙空間とみなされるからです。

もっとも、条約や法律のどこかに、高度100kmが宇宙空間である、と定められているわけではありません。

国際航空連盟(スカイスポーツの国際組織)が宇宙空間と大気圏の境界を高度100kmと独自に定め(この境界をカーマン・ラインといいます。)、その基準に皆が慣習として従っているに過ぎません。ちなみにアメリカのNASAもこの慣習に従っています。

 

慣習ではなく、早く条約で「宇宙空間」を定義してしまっても良いのではないかと思います(近年国連でも検討課題としているようです)。

この定義付けがなかなか進まない理由として、宇宙条約によって、宇宙空間の国家による領有が禁止されていることが挙げられるでしょう(宇宙条約2条)。

宇宙空間を国家が領有することはできず、宇宙空間より下が各国の領空になるため、厳密に宇宙空間が定義されると自分の国の領空が制限されてしまうとでも考えるのでしょうか。しかし、高度100kmまで領有権が確保できたら十分でしょう。

宇宙への進出という遠大な目的のために、まずは宇宙空間の定義を行うという一歩を踏み出して欲しいところです。

 

翻って今回のMOMOのロケット打ち上げは、宇宙開発にとって大きな一歩となりました。MOMOに触発された子どもたちが、将来宇宙飛行士や、宇宙開発の技術者・関係者になるかもしれません。

これからも日本だけでなく世界中の宇宙開発に期待したいです。

米国のイーロンマスク氏がCEOを務めるスペースX社は、201512月、世界初となる商用の衛星打ち上げロケットの垂直着陸を達成し、近い将来民間による火星探査移民構想も掲げています(国際宇宙会議2016IAC2016))。

日本では、三菱重工やIHIがロケット開発に関わっていますが、最近ではホリエモンこと堀江貴文氏もロケット開発事業を行い始め、宇宙開発事業は活気づいてきております。

 

このような中、宇宙開発に関する法律として、半年ほど前に「宇宙活動法」が成立し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が関わる形でしかできなかったロケット打ち上げが、国の許可を得られれば民間業者の参入が可能になりました。

宇宙開発事業が活気づき、近い将来世界的に宇宙旅行も増えていくことでしょう。

この宇宙旅行は巨額のお金が動くビッグビジネスですが、日本もこの宇宙旅行ビジネスの波に乗れるかというと、ちょっと難しいかもしれません。

 

というのも、例えば米国では自己責任の文化が強いせいか、事業者が宇宙旅行希望者に対して宇宙旅行のリスク説明をきちんして、そのリスクを宇宙旅行希望者が承諾すれば、リスクの高い段階(まだ宇宙旅行が一般化していない今の段階)でも、宇宙旅行ビジネスを認めています。インフォームドコンセントが充たされれば、宇宙旅行希望者に事故等があったとしても、宇宙旅行希望者やその家族が、企業や米国政府に対して損害賠償を請求することはできないようになっています。

 

一方日本では、自己責任の意識は少なく、国が許可を出したかどうかを重視する傾向があるようで、当事者間のインフォームドコンセントは重視されず、今現在、日本企業が主体となって行う宇宙旅行ビジネスについて国の許可が下りた例はありません。お国柄の違いから考えると、今後宇宙旅行ビジネスを日本で主体的に行うのは、まだまだ時間がかかりそうです。

 

宇宙旅行はいわばロマンある冒険なので、ヒマラヤに登るのや、未開拓の洞窟探検と変わらず、個人が自分の人生観に従ってリスクを承知しながら決断すれば、もっと積極的に認めても良いのではないかと思います。

ロマンのある冒険の一つである宇宙旅行に、日本も積極的になってくれることを願うばかりです。

 

ちなみに、宇宙旅行をするにもロケットの打ち上げが必要になりますが、ロケットの打ち上げは航空法の規制がかかり、国土交通大臣の許可が必要になります。「ロケット、花火…その他の物件を…打ち上げる」(航空法施行規則209条の3)には国土交通大臣の許可が必要と法令に規定されており、日本の航空法令上は、ロケットは花火と同様の扱いがなされています(爆発することが前提の花火と、人や物を運ぶためのロケットとは本質的に違うものだと思いますが…)。

 

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