私としては、非常に「がっかり」な判例なのですが、弁護士会照会に対し照会先が正当な理由もないのに報告義務を不履行にした場合であっても、その照会の申し出をした弁護士に対して損害賠償義務を負わないと判断した判例を紹介します。事案は、次のようなケースです。

(1) Aは、X弁護士を代理人として、ゴルフ場「Cカントリークラブ」の経営をしているB社に対して金銭の支払いを求める訴えを提起して、仮執行宣言付の認容判決を得ました。

(2) (おそらく、X弁護士は、ゴルフ場における代金の支払いにはカードが使われることが多いので、Yカード会社に対してであれば、B社は売掛金債権を有していると考えたのでしょう。)X弁護士は、所属する弁護士会に対して、Aの受任弁護士として、弁護士法23条の2に基づき、Y社に次の①および②について照会するよう申し出を行い、同弁護士会は、Y社に対し実際に照会しました。
① Cと加盟店契約をしているのは、Y社であるか、あるいはそのグループ会社か。グループ会社であれば、その会社の商号と所在地を回答願う。

② Cと加盟店契約を、Yあるいはそのグループ会社としている、相手方当事者である法人の商号と所在地。またわかるのであれば同加盟店契約の締結年月日を回答願う。


(3) しかし、Y社は、セキュリティーセンター加盟店管理グループの名で、同弁護士会の会長に対し、「顧客との守秘義務により、お答えできません。」との理由で報告を拒否しました。

(4) そのため、X弁護士は、Y社には弁護士照会に対する報告義務不履行があり、これによって損害を被ったとして、損賠賠償を求める訴えを提起しました。

(参考)
弁護士法23条の2(報告の請求)  弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があった場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でない認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基づき、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。


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