離婚相談を受けていると、離婚をしたい理由としてもっとも多いのが「性格の不一致」です。浮気や暴力などの決定的な理由はないが、どうしても相手方(夫または妻)と相性があわなくて離婚したいというわけです。では、性格の不一致で離婚ができるのでしょうか? 

まず、注意しなければならないのが、夫婦がお互いに話し合って、離婚に合意して、役所に離婚届を提出することによって成立する協議離婚の場合には、離婚の理由は問われないので、性格の不一致で離婚できるといことです。

厚生労働省が平成21年に公表した「離婚に関する統計」では、平成
20年度に離婚した夫婦のうち、87.8%が協議離婚で、裁判所が関与する調停離婚・裁判離婚は、12.2%しかありません。したがって、世の中の離婚は大部分、性格の不一致を原因にして行われているのではないでしょうか。 

ただ、問題は夫婦の一方が離婚を拒否して、離婚調停をしても離婚の合意にいたらず、離婚訴訟をする場合です。この場合は、相手の意思に反して、国家が強制的に離婚させるわけですから、これを正当化する法律上の理由(「離婚事由」などといいます。)が必要です。

それを定めているのが民法第770条第
1項で、次のような条文になっています。 

(裁判上の離婚)
第770条  夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
 配偶者に不貞な行為があったとき。
 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

第1号から第4号までに「性格の不一致」が該当しないことは明らかだと思います。では、第5項の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかですが、これは夫婦関係が破たんして回復の見込みがないことが客観的にみてとれる状態を意味しています。代表的なものは、家庭内暴力、過度な宗教活動、犯罪行為、性交不能などがありますが、残念ながら、単なる「性格の不一致」は(おそらくすべての夫婦に多かれ少なかれあるものですので)これにあたらないと一般的には理解されています。単なる性格の不一致ではだめで、たとえば、性格の不一致が原因で、夫婦喧嘩が絶えることがなく、夫婦の一方が精神的におかしくなっているというような+αが要求されるのです(ちなみに、多くの離婚事件では、この+αをどのように裁判で主張立証していくかが弁護士の腕の見せ所になります。)。

ところで、実務上、多くの事件では、この+αとして「別居」が主張されることになります。1996年に法務省が発表した民法改正案では「5年以上の別居」が離婚事由として加えられましたので、5年が大体の目安になりますが、実務的な感覚としては、3年別居すればこの+αとして十分主張できるように感じています。

というわけで、相手方が同意してくれない場合には、単なる性格の不一致では離婚できませんので、ご注意ください。