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 働き方改革関連法に続き、影響が大きそうな法改正として、民法(債権法分野)の改正を行う「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)の施行日が迫ってきています。

「民法の一部を改正する法律」は、201762日に公布され、施行日は202041日を予定しています。(一部例外もあります。)

 民法の債権法分野は、1896年(明治29年)に制定されて以降、実質的な内容の改正が行われないまま、今日まで来ました。ですが、流石に100年以上の時が経つと、現在の社会や経済の状況に合わない規定も出てきます。そこで、今回、債権法分野について大規模な改正が行われることになりました。

 ちなみに債権法分野と簡単に言っていますが、「債権」とは「特定人(債権者)が他の特定人(債務者)に対して、一定の行為(給付)を請求することを内容とする権利」(デジタル大辞泉)のことを言い、民法の債権法分野には、この債権の発生・変更・消滅等に関わる様々な規定が含まれます。一口に債権法分野と言っても、その範囲は非常に広いのです。

 さて、「民法の一部を改正する法律」による改正項目は多岐に渡りますが、法務省は、主な改正事項として次の24個を挙げています。(http://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

1.消滅時効に関する見直し                                  2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し                                              4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設                 6.意思能力制度の明文化

7.意思表示に関する見直し                                       8.代理に関する見直し

9.債務不履行による損害賠償の帰責事由の明確化   10.契約解除の要件に関する見直し
11.売主の瑕疵担保責任に関する見直し                     12.原始的不能の場合の損害賠償規定の新設

13.債務者の責任財産の保全のための制度                 14.連帯債務に関する見直し

15. 債務引受に関する見直し                                         16.相殺禁止に関する見直し

17.弁済に関する見直し(第三者弁済)                     18.契約に関する基本原則の明記

19.契約の成立に関する見直し                                    20.危険負担に関する見直し

21.消費貸借に関する見直し                                        22.賃貸借に関する見直し

23.請負に関する見直し                                               24.寄託に関する見直し

 
 また、このうち重要な実質改正事項として、次の5つが挙げられています。(http://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf

1.消滅時効に関する見直し

2.法定利率に関する見直し

3.保証に関する見直し

4.債権譲渡に関する見直し

5.約款(定型約款)に関する規定の新設

 

 今回、一つ一つの改正項目を解説することはできませんが、これを見ただけで、非常に多くの規定が改正されていることが分かりますね。 

 上記改正により、日常生活でもビジネスでも最も重要な債権の発生原因である契約についての規定が変更されたり、発生した債権が不履行になった場合の取扱いに関する規定が変更されたりしています。今後は、これまで使用していた契約書の雛形等の見直しが必要になってくるでしょう。(現在、民法改正に対応した契約書の雛形集などはあまり充実していませんが、これからどんどん出てくると予想されます。)

 特に事業者の場合、今回の改正が関係しない方はほとんどいないでしょうから、少しずつ、改正への対応を進めていきましょう。

派遣法の改正案が再び国会に提出されました。

 

(2015年3月14日日経新聞朝刊5頁から)

政府は13日、派遣法社員に同じ仕事を任せる期間の制限を事実上なくす労働者派遣法の改正案を閣議決定し、国会に提出した。企業は派遣社員を活用しやすくなる。同時に派遣社員が雇用上の不利益を被らないように、派遣社員に対して派遣社員が期間終了後も働き続けられるように対応することを義務づけた。

9月1日の施行を目指す。ただ野党は「一生派遣につながる」として強く反対し、これまで2回廃案になっている。塩崎恭久厚労相は13日の閣議後の会見で「3度目の正直で成立させたい」と強調したが、閣議は難航が予想される。

 (私の感想)

私自身は、

① 日本の労働者派遣は、「正社員が本則で、派遣は一時的・臨時的な働き方」という位置づけで作られており、実務的には、「正社員の解雇が厳しく制限されているため、経済的な負担が大きくても雇用調整をしやすい派遣を使う」という発想で使われ、職場における正社員と派遣社員間の差別(同じ仕事をしているのに待遇が違う)を助長する方向で機能している。

② しかし、「正社員が本則で、派遣は一時的・臨時的な働き方」という位置づけ自体がおかしい。専門職などでは会社単位に働くよりも、案件・仕事単位で働く方が適している場合があり、そういう場合には、派遣は一時的・臨時的な働き方ではなく、恒久的な働き方とも位置付けられる。

③ また、雇用調整の必要性があるから派遣を増やす(雇いやすくする)という発想もおかしい。そもそも日本の社会および企業は、従業員を定年までずっと雇えるほどの体力がなくなっているのだから、雇用調整の必要性は、(派遣を増やす方向ではなく)一定の補償のもとで、正社員の解雇制限の規制を緩める方向で検討されなければならない。


という考えを持っています。

 

ところが、今回の派遣法の改正は、これまでの正社員と派遣社員の区別(雇用調整のための派遣)を前提としつつ、一方で、企業側で派遣を使いやすく、他方で派遣労働者側の立場にも配慮するというもので、そもそも問題の根本である正社員の解雇制限の問題に手をつけていません。したがって、私のような考えを持っている者からすると、この改正は、中途半端というべきもので、若干ひややかな目で見ています。

ただ、最近、竹中平蔵氏が、上記と同様の趣旨の発言をしたところ、ネット等でかなり叩かれましたので、おそらく、このような考え方は、まだまだ少数派なのでしょう。現状では、ドラスティックな制度変更は望めません。

 

だとすれば、問題のある現状を少しでも改善していく方向で考えなくてはなりません。

いずれにしても、労働法制は我が国の成長性を高めるうえでとても重要な分野ですので、国会で、今国会では実りある議論がなされることを望みます。 

更新が遅れてしまい大変恐縮ですが、このブログでも取り上げさせていただいた(政府から国会に提案され、今国会で審議されていた)労働者派遣法の改正案が、6月20日に廃案となることが決定いたしました。

その理由は、罰則規定について「1年以下の懲役」と書くべきところを、「1年以上の懲役」と間違って記載してしまったため、野党から「国会軽視」という反発があり、修正ではだめで、新らたに提出しなおすべき、ということです。(同時に、有期雇用の上限を5年から10年に延ばす有期雇用労働者特別措置法も継続審議となりました。)

政府は、今回廃案になった労働者派遣法の改正案を次期国会に再度提出する方針とのことですが、2015年4月としていた施行日を先延ばしする可能性があるとのことです。

労働者派遣法の改正案の内容については色々議論があるところなのですが、ただ明確な誤記を理由に廃案にしてしまうのもいかがなものか、という感想を持ちました。

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