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無題

今年の9月から11月にかけて、東京中小企業家同友会の経営指針成文化セミナー(全7回)を受講しました。このセミナーは、同会の看板セミナーで、受講生を5~6名のグループに分けて、グループ内で、自社の経営理念や会社の強み・弱み、3年後・5年後の姿(数字も含む)、そのための戦略について徹底的に議論します。そして、過去の受講生OBが各グループに3~4名サポーターとして加わってくださり、社外役員としての立場から意見を述べてくれます。

人によっては自分だけで出来る人もいると思いますが、私なぞは、あれやこれや自分の頭の中で考えているだけではダメで、自分の考えを言葉にして、他人に伝え、他人からフィードバックしてもらい、さらに同じテーマについて他人の話を聞いて、初めて理解が深まります。

同セミナーのお蔭で、弊事務所のHPに、経営理念を掲げることができました。これから、この理念をどう生かして行けるかが課題ですね。

すっかり前置きが長くなってしまいました。
実は、その成文化セミナーで、私のグループにサポーターの一人として議論に参加してくださっていたのが原先生でした。原先生からは、同じ弁護士事務所の経営者として、様々な貴重なアドバイスをいただきましたが、この本を見て驚きました。何と原先生は、弁護士になりたての若手弁護士にも、とても役に立つ実践的なアドバイスをされています。

この本は、従来であれば、弁護士事務所の中で無意識的に伝授されてきた仕事における物の見方のようなものを、文字にして見える化したものだと思います。OJT(on the job training)の機会に乏しい若手にはとても参考になりますし、また、そのように1冊の本としてまとめられると、我々中堅にとっても、改めて自分の考えと比較して考えることができて、とても参考になります。
ポイントレッスンとして挿入されているコラムも、とっても面白い。
(私は、普段の仕事の中でも「後生畏るべし」と感じているので、実は、この本をあまり読ませたくなかったりしますが、そんなことを言ったら原先生から怒られそうですので)若手の皆さん、これから実務に出る皆さん、この本はお勧めですよ。

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無題

いろいろ意見のある本ですが(アマゾンのレビュー欄参照)、私としては、法律家が書いた本にしては、『読める』本であり、最初から最後まで面白く読ませていただきました。

特に、我が国の労働法を、①厳格な解雇規制を中心にしつつ、②でも期間雇用の規制は緩い、③残業に関する規定も緩い、④退職勧奨は自由にできる、⑥配置転換に関する規制も緩い、と説明する手法はわかりやすいと感心しました。

また、正社員を解雇すると2000万円かかるとか、裁判所はほとんどパワハラを認めないとか、非常に歯切れがよくて、使用者サイドの弁護士の視点が良く出ていて、この点も素晴らしいと思いました。

一般書なので、わかりやすいさを重視して、多少正確性を犠牲にせざるを得ないところがあり、その点が批判の対象になっていますが、労働法と労働実務のイメージを掴むにはとても参考になる本ですので、労働法に興味のある方には、是非お勧めします。

2012年3月に出た本ですので、その後の有期契約の無期化等の改正はフォローされていませんので、ご注意ください。

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本

作家橘玲(たちばな あきら)氏の最新作『臆病者のための裁判入門』(文春新書)を読んでみました。橘玲氏といえば、近時、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』とか『(日本人)』などの話題作を世に出した人気作家です。さすがに、この本も、我々の常識を覆すような情報が満載されており、弁護士である自分自身が読んでもとても面白かったです。以下、3点ほど感想を書いてみたいと思います。

1. この本の前半部分は、橘玲氏が、外国人の友人の損保会社に対する少額の損害賠償請求訴訟等に、補佐人等として関与した体験をまとめたものです。簡易裁判所の民事調停が役に立たなかったり、訴訟(裁判)提起にあたり簡易裁判所と地方裁判所をたらい回しにされたり、地方裁判所で当事者が争点としていない点について不意打ち的な判決を受けたりと、様々な気の毒な体験をしますが、これらの部分については、弁護士である私にとっては、「さもありなん。」という感じでした。しかし、裁判の経験のない人にとっては、とてもリアルで面白いでしょう。

2. この本の冒頭に出てくる『本人訴訟』のデータには驚きました。弁護士が代理人に付かずに当事者本人が訴訟を遂行する訴訟のことを『本人訴訟』といいますが、昨年終結した事件のデータで、地方裁判所の通常事件の30%しか原告・被告双方に弁護士の代理人が付いた事件がなく、あとの70%は、原告・被告のいずれか又は双方に弁護士が付いていない本人訴訟とのことです。これが簡易裁判所になると、全体の97%超の事件で、原告又は被告のいずれかが本人であり、60%近くが原告・被告双方とも本人。さらに、簡易裁判所で行われている少額訴訟手続の97%が原告・被告双方とも本人訴訟であるといいます。業界では、今「弁護士の数が増えて仕事が無くなった」などと言われているのですが、実は、実は、司法の世界には、弁護士未踏の広大な領域があることになります(ただ、この分野を仕事に結び付けることはとても難しい…)。

3. この本の後半部分には、何故、弁護士代理人を付けるような裁判があまり利用されていないのか?という疑問に対する答え(もしくはヒント)が書かれています。それは、

① 米国におけるディスカバリーのような制度がなく、当事者に事実調査の方法がない(真実追求に対する当事者の満足が得られない)

② 強制執行制度が機能しておらず、判決を得ても、相手方が財産の名義を変えてしまうような不誠実な人であると、「判決はケツ拭く紙ほどにも役に立たない」と言われてしまう(判決を得ても実効性がない)

③ 弁護士と依頼人とのマッチングができていない(これは、弁護士法により弁護士紹介業が禁止されていることが大きいと思います。)

というような分析がなされています(もちろん、この本自体は、このような疑問に直接答える形をとっていないので、あくまでも私がそのように読んだということです。)。

これらの問題点については、既に議論されているところだと思いますが、至極もっともな意見であるように思いますので、民事訴訟法学者には大いに研究してほしい分野ですし、我々も声を大にして改正を求めていかなければならないと思っています。

以上


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下町ロケット


145回(平成23年/2011年上半期)の直木賞受賞作であり、販売冊数は35万部を超えたようですので、このブログの読者のなかにも、既に読まれた方も多いのではないでしょうか。

この小説は、ももともと宇宙科学開発機構でロケットエンジンを研究していた主人公の佃航平が、ロケットの打ち上げの失敗を契機に、同機構を辞め、親から引き継いだ佃製作所(町工場・中小企業)をめぐる物語です。
佃製作所が、上場企業から主力商品について特許訴訟を仕掛けられ、資金繰り難等の経営危機を迎えつつ、紆余曲折もありながら、辣腕弁護士の力を借りて、反対に、自社の別の特許を利用してこの上場企業に特許訴訟を提起し返し、この上場企業と闘っていきます。
そして、以上の特許訴訟とは別に、自社で開発していた水素エンジンのバルブの特許権を見直して、我が国で宇宙開発をしている別のトップ大企業に対して法律的に有利な立場を築き、この特許権が欲しいこのトップ企業との間で、たくましく交渉していくのです(そして、どうなったかは読んでのお楽しみです。)。
最終的に、佃製作所一丸となって、主人公の夢を実現させ、会社としても成長していきます。

特許訴訟が、単に裁判上の「勝った・負けた」にとどまらず、企業の経営戦略(この本で描かれているように悪意の戦略に利用される場合もある。)にも利用されるという意味で、現実の企業社会における特許の意味が良くわかる秀作であり、特許等の知的財産に興味のある方には、特に、一読をお勧めします。

私個人としては、佃製作所の顧問弁護士で当初特許訴訟を担当した老弁護士に、弁護士の悲哀を感じました。どこに悲哀を感じたかは読んでのお楽しみですが、このような弁護士にならないよう精進したいと思います。

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司法殺人 元裁判官が問う歪んだ死刑判決

私は、著者の森炎(もりほのお)弁護士(元裁判官)と面識がある。私が司法修習生だったとき、青森で実務修習をさせていただいたが、そのときの青森地裁民事部の右陪席裁判官が森さんだったのだ。残念ながら、私の民事裁判修習が始まる直前に、ちょうど退官されたので、森さんから直接教えを受けたことはない。ただ、懇親会等でご一緒させていただいたときなどには、森さんから気楽に声をかけていただいたので、とてもフランクなイメージがある。また、たしか当時社交ダンスをされていて、すらっとしていて、髪を油で固められていて、とてもダンディーで格好良かった(今でもきっとダンディなのではないかと思う。)

その森さんが最近新書で刑事裁判の本を立て続けに出版していたので(幻冬舎新書『なぜ日本人は世界の中で死刑を是とするのか-変わりゆく死刑基準と国民感情』、幻冬舎新書『量刑相場 法の番人たちの暗黙ルール』)、少々気になっていた。この本は、新書ではなく単行本であるが、「司法殺人」というインパクトのある題名に惹かれて、手に取った次第である。


読後の感想としては、非常におもしろい、というかとても考えさせられた。

3つの事件が取り上げられているが、いずれも詳細に記録が検討されていて、非常に突っ込んだ内容であるが、とてもわかりやすく書けている。職業裁判官の考え方がリアルに述べられているし、第一発見者と犯人の区別、内部犯と外部犯の区別、自白の任意性、秘密の暴露、「疑わしきは罰せず」ということの本当の意味も良く書けていて、「目からうろこ」という感じがした。裁判員制が採用された今日、一般の人にも読んでもらいたい本であるが、「裁判員制」などと固いことを考えなくても、とても興味深い本であると感じると思う。

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説得の論理3つの技法 (日経ビジネス人文庫)

草野弁護士が昨年12月に出版された『会社法の正義』を読んで、その高度な内容に感銘を受けたことは以前の書評に書かせていただきましたが、再び草野弁護士の本を読みたくなり、アマゾンで購入してみました。

この本は、草野弁護士が、19975月(今から15年も前です。)に講談社より刊行された『日本人の知らない説得の技法』という本を、20031月に改題のうえ文庫化したものとのことです。実は、私が弁護士登録したのは、19973月ですので、ちょうどそのころに出版されていたことになります(全然知らなかった。)。

で、どうだったか?ですって。

この本も素晴らしい! とても高度な内容なのに、非常にわかりやすくて、失礼ながら弁護士とは思えない。人を説得しなければならない職業に就いている人にとってはバイブルとなり得る本ですし、そうでない人にとっても、一般教養本として十分に楽しめる本だと思います。(どれくらい売れたのかは知らないのですが)この本は、もっと人々に読まれるべきだと思いました。

この本の「あとがき」(314頁)によると、そもそも草野弁護士は、学生時代に、自らが選択した法律学が科学でないことについて知的コンプレックスを感じていたとのことです。法律解釈額は、真実の発見を目的とした営みではないため、自分と違う「答え」を出した人に対し、その答えが間違っていることを示す絶対的根拠は存在しない。数学や物理の勉強に慣れ親しんだので、そのような法律学の「非科学性」に強い失望をいだいた、というのです。

実は、(私は数学や物理のことはわかりませんが)私も法律学について同じ思いを抱いていました。このことは、『会社法の正義』の書評に記載したとおりです。

しかし、草野弁護士は、この本を書いた当時において、次のように述べています。

「法律家となって18年目を迎えた今日、私は自分の仕事に知的コンプレックスを感じてはいない。〔中略〕率直に言えば、実社会での経験を通じて、人間の知性ないしは理性の果たす役割についての視野が広がったからだと考えている。」

「たしかに法律家は真理の発見に仕えるものではない。しかし人間が発見しうる真理とはしょせんわずかなものであり、我々は、真理と呼ぶにはほど遠い不確かな知識や、それ以上に不確かな「価値」の問題をあれこれ考えながら日々の生活を送っている。人間はそのような日常の営みにおいてもできる限り理性を働かせたいと願っており、理性の力をその表現手段である言語を用いて他人に及ぼしたいと考えている。説得とはこのような営みであり、法律家の仕事の中心もまたここにある。法律家は法律という巨大な行為規範の体系を手掛かりとして説得を行うものである。法律解釈学の任務は、法律家が行うこの説得の技法を研究することだ。それは決して科学ではないが、人間の理性の営みとして十分な存在意義を持つに違いない。そう考えるようになったのである。」

そして、草野弁護士は、余暇にラテン語の勉強をするようになり、古代西洋で盛えた説得の技法(Ars Persuadendi)の魅力や歴史等を知り、「現代社会に生きる人々の役に立つような説得の技法を私なりに体系化してみようと考えるに至〔り〕」、この本を書いたというのです。

いやいやいや、この本で、説得の技法がもつ、科学には包摂しえない豊饒な説得の技法の世界を勉強させていただきました。

実務の世界では、何を言ってもダメ、という相手によくぶち当たりますが、この本の技法を応用して、説得を楽しみたいと思います。

是非是非皆様にもお勧めいたします。

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鯨とり 対訳シナリオで学ぶ韓国語

先日、このブログで、弊事務所の顧問先である西ヶ原字幕社が発売したDVD『鯨とり』をご案内させていただきましたが、その続編というべきか、今般、西ヶ原字幕社が、『鯨とり 対訳とシナリオで学ぶ韓国語』という本を発売いたしました。

この本では、映画『鯨とり』の脚本と西ヶ原字幕社の日本語訳と、さらにそれに対する同社の林原圭吾社長の解説が見開き1頁で見通すことができます。韓国語を学ぼうとしている方にはとても嬉しい一冊ではないかと思いますので、このブログでもご案内させていただきます。

ちなみに、私は韓国語を話せませんし、勉強をしたこともないのですが、この本には、12あるChapterごとに、80年代の韓国の時代背景、映画『鯨とり』やその出演者等々について、林原社長のコラムがついており、それがけっこう秀逸です。

『鯨とり』という映画には、80年代の軍事政権下における韓国の「民主化運動のメタファー」という解釈があるという点(9頁)には、解釈好きの私にとっては、「この映画を見る目が変わった」という感じがしました。ちょっとネタバレになってしまうかもしれませんが、この映画には、「口のきけない少女は、言論の自由のメタファーで、政治的に目覚めていない学生と厭世に走るインテリ層が力を合わせて、これを取り戻す」というメッセージがあるものと受け止められたとのことです(まだ見ていない方は、見てのお楽しみですね。)。

また、『鯨とり』の言葉の意味についてのコラム(96頁)も、「そうなのか!」という感じで、思わず笑ってしまいました。韓国語の「捕鯨」と「包茎」とが同じハングルだそうで、韓国の方は、「鯨をとる」と聞くと、「包茎手術をする」という意味を連想するとのことです。初めの方で、主人公の学生ミヌと、ホームレスのビンテが、「鯨をとる」ということで、何故か売春宿に行くのですが、その謎が解けました。

韓国語の勉強だけでなく、『鯨とり』という映画を理解するうえでも、とても有益な本であると思いました。韓国に興味のある方、是非ぜひお勧めいたします。



以上

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武器としての決断思考 (星海社新書)

東京大学卒業後マッキンゼーで働き、今は、京都大学の一般教養課程で、『起業論』などの講義を持っている瀧本哲史さんの著書です。瀧本さんは、日本経済が衰退期を迎えた現在、かつてのような高度成長時代の大会社に入っていれば安心というような時代は終わり、若者は将来について予測不可能な状況に置かれていると考えています。そのような状況の中で、いわばゲリラである若者たちに日本社会というフィールドで戦えるように、軍事顧問として「武器としての教養」を配りたいと言います。そして、今重要なのが、予測不可能な状況の中で、変化に対応できるように意思決定ができる思考方法であり、それに役立つのがディベートの技術なのだということで、ディベートの解説をしています。

裁判も、原告と被告、検察と弁護人が、法律の適用をめぐる議論(ディベート)をして、第三者である裁判官を説得する作業とみることができ、瀧本さんのディベートの説明は、とても参考になりました。日頃なんとなくわかってはいるのですが、体系的に説明されると、目からウロコなところがあります。この本は、若者のみならず弁護士にも武器を与えますね。よかったら、ご一読をお勧めします。



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民法改正: 契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書)
民法改正: 契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書)


   現在、民法の改正作業が進められています。   
   2009年11月に、法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法(債権関係)部会で、民法改正についての審議がスタートし、2011年5月には「中間的な論点整理」が公表され、6月にはパブリックコメントが実施され、7月からはパブリックコメントを踏まえて、また審議が開始され、2013年までに中間試案を取りまとめる予定だそうです。

   この民法改正作業について、何故今、改正が必要なのか? どのような点が改正の対象になりそうなのか? といった疑問に答えてくれるのがこの本です。新書ということもあり、法律関係の仕事をしている人だけでなく、一般の人にも理解しやすいように平易に説明されています。

   この本によれば、民法を改正する必要性・理由は次の3点あります。

 1つ目は、現行民法はとてもわかりにくいということです。民法第95条の錯誤規定のように、条文を読んだだけでは意味が分からない、具体的な事案について規範内容が導けないことが多いため、膨大な判例法というものが形成されているのですが、民法典を読んでも、一般の国民がどう行動してよいかわからないのでは、一般国民にルールを提示すべき法律の役目を果たしていないことになります。私も、常々この点は感じますね。特に、不当利得と不法行為は、何とかしてもらいたい。

 2つ目は、現行民法は古すぎるということです。現行民法が制定されたのは、日清戦争が終了した1年後の1896年(明治29年)のことです。どのような時代だったかというと、その7年前にようやく新橋・神戸間で東海道線が開通し(東海道新幹線ではなく、東海道線です。)、3年後に、東京・大阪間で長距離電話ができるようになった時代とのことです。したがって、当然のことながら、現行民法は現代社会に対応できていないことになります。例として、消滅時効制度、法定利息、約款、預金取引、サービス提供契約、不可抗力による免責、事情変更の原則などが挙げられています。私の弁護士としての実感としても、そのとおりという気がします。

 3つ目は、国際化に対応できていないということです。グローバル取引の時代を迎え、今、各国で民法の改正が行われており、これから準拠法をどの国の法律にするか等々で、国際競争が行われようとしています(というか現に行われているのでしょう。)。その際に、古臭くて、穴だらけで、判例や学説を調べなければ、具体的に裁判で使われている規範が確定できないような民法では、たちうちできないということです。日本国民及び日本の法曹は、諸外国に引けを取らない知的水準にあると思うのですが、道具が悪くて負けてしまうなんて、とてももったいないことです。我が国の発展のために、民法改正を実現しなければならないという気になりました。 

   以上のようなことが、現行民法の制定過程に遡って、また具体例も多数挙げて、わかりやすく述べられています。民法改正の議論を早わかりするには最も適した本だと思いますので、おすすめ致します。

 ところで、著者の内田貴先生についてですが(弊事務所の弁護士はいずれも、面識はもありませんが)、民法改正作業のため、東京大学法学部教授の職を2007年に辞め、現在は法務省民事局参与として民法改正作業に従事されているとのことです。内田先生が東京大学出版から出している民法の教科書は、司法試験受験生であれば一度は参照したことがあるといっても過言ではないでしょう。とてもわかりやすいくて定評のある教科書です。末は大学者になると思っていましたが、教授の地位を投げ打って、民法改正に身を投じるとは。その心意気に感じ入りました。弊事務所の弁護士は、「民法が改正されるとまた新法を覚えなければならなくなるから、改正に反対」などと、器の小さい議論は決して致しません。

 内田先生を応援しています。


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