こんにちは。弁護士の萩原です。
以下は、今月発行のメルマガからの転載です。
賃金体系について労働契約法20条の観点から見直してみていただくきっかけとなれば幸いです。


平成28727日の日経朝刊によれば、正社員と契約社員の手当格差(労働契約法20条)に関する大阪高裁判決が、同月26日に言い渡された。

物流会社の有期契約の運転手が賃金格差の是正を求めた事案であり、一審(大津地裁彦根支部)は、「通勤手当」の不支給につき違法と判断していたが、控訴審である大阪高裁は、正社員に支給されている7種類の手当のうち、「通勤手当」のみならず「無事故手当」など4種類の手当の不支給について違法と判断したとのこと。その他の賃金の格差については、契約社員と正社員との間で、転勤や出向がないという事情を考慮したうえで、是正の必要性はない(適法)と判断したようだ。

先月、弊事務所ブログに「定年後の再雇用と労働契約法20条に関する判決」(東京地裁平成28513日判決)をテーマにした記事をアップしたばかり。

http://blog.tplo.jp/archives/47690816.html

労働契約法20条は、平成25年施行であるため、徐々に浸透し、現在も各地でさまざまな訴訟が係属しているだろう。和解で解決する事案ももちろんあるだろうが、訴訟上は当事者である当該労働者のみの賃金格差の話であるものの、その結果によっては事実上全社レベルでの賃金体系の変更が問題となってくる(今回の物流会社についても大阪高裁の判断に従う場合には、訴訟当事者である運転手以外にも同様の有期契約の運転手の賃金を見直す必要がある)。そのため、和解にならずに判決も出るケースが今後も続くのではないか。

こうした判決(裁判例)の集積が実務へ影響を及ぼすことは間違いない。とくに、今回は、高裁レベルで、しかも、「大阪」高裁の裁判例ということでその影響度は大きいと思われる。

判決文を入手できていないので推測になるが、今回の大阪高裁は、通勤手当以外の各手当の性質や位置づけを詳らかに検討したうえで、不合理性を判断したものと思われる。たとえば、無事故手当の性質は、運転業務において安全を奨励し、かつ安全を維持した社員に対する報奨であることからすると、契約社員も正社員同様の運転業務を担っており当然ながら無事故(安全)であることも求められていることに照らし、契約社員についてのみ不支給とすることは不合理と言わざるを得ない、といった具合に。

なお、行政解釈(厚生労働省)では、「とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるものであること。」とされており(基発08102号)、手当については、「通勤手当」が例示されたうえで、その相違は特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるという見解が示されている。

通勤手当は言わずもがなであるが、その他の手当についても、正社員のみ支給対象としているものがある場合には、その合理性(不合理ではないか)を検討した方がよい。

正社員にのみに支給している○○手当は、どのような性質のものであり、なぜ正社員にのみ支給しているのかという趣旨に立ち返って検討するべきである。