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2022年12月11日 日経新聞朝刊27頁

「再婚後出産、現夫の子に」「嫡出推定で改正民法成立」「明治以来初 無戸籍解消へ」との見出しの記事から

妊娠や出産の時期によって父親を決める「嫡出推定」を巡り、制度を変える改正民法が10日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。出産が離婚から300日たっていなくても、女性が再婚していれば現夫の子とみなす例外を設ける。


(飛田コメント)
 改正民法では、離婚後100日間の再婚禁止規定は廃止、離婚後300日以内に子供が生まれた場合、原則として前夫の子として推定し、例外的に子供が生まれた時点で再婚していた場合には現在の夫の子供として推定するということになったようです。改正前は、離婚後300日以内に子供が生まれた場合、母が他の男性と結婚していても前夫の子供と推定されることになっていたので、今の時代にあっているとは思われず、よい方向での改正だなと思うのですが、再婚していない場合には、前夫の子供と推定されてしまうので、その点を残したのが適当であったかは議論がわかれるところだと思います。私的には、離婚間際に、夫婦が子供を作ろうとするのか少々疑問がありますし(もちろん中にはいるのでしょうが、普通は作らないのではないか?)、前夫の子供と推定されるのが嫌で、依然として出生届をしない(したがって無国籍となる)例がなくならないのではないかと思うのですが、いかがでしょう?
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2022年12月12日 日経新聞朝刊3頁

「洗脳下の寄付 一定の抑止」「被害者救済新法 違反には罰則」「成立優先、抜け道なお」との見出しの記事から

「救済策では禁止行為に基づく勧誘に困惑して、意思表示した寄付について事後的に取り消せると明記した。行為ごとに取り消し権を行使できる期間を分けて最長で10年と決めた。」

「救済対象を寄付者の家族にも広げたのも一歩前進といえる。子供や配偶者が生活費や養育費などを確保するために寄付を取り消したり、金銭の返還を請求したりする権利を盛り込んだ。」


(飛田コメント)

 記事中では、この問題の専門家の弁護士から、信者は宗教の使命感や責任感が根付いて寄付に至ることが多く、困惑しているケースは少ないから、「自由な判断ができない状況」など、より範囲の広い文言を規程すべきとのコメントがなされています。私も具体的な裁判の場合で、「困惑」をどのように立証するのか興味があります。信者側が、単に「困惑して寄付してしまいました。」と陳述書を提出すればよいのか、それとも陳述書だけでは不足で、一般的に「困惑して寄付する」ようなときに人々が残す何らかの証拠を提出する必要があるのか?その何らかの証拠とは一体何なのか?(例えば、寄付した方が良いか否かを家族に相談していて、その際に寄付しなければバチがあたる、と言っていたというような家族の証言?)興味がありまね。
 ただ、このような法改正をしたことは、洗脳により寄付をしてしまったような人々やその家族に対する解決策を示すもので、一歩前進だと思います。
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2022年10月9日 日経新聞1頁

「寄付取り戻し可能に」「霊感商法など政府、法改正へ調整」との見出しの記事から。

消費者契約法は不当な勧誘による契約の取り消しなどを定める。
2018年の法改正では不安をあおってつぼや書籍などの高額商品を購入させる霊感商法も対象として明記した。
それでも適用例はほとんどなかった。現行法の「消費者契約」は主に物品販売を想定しており、旧統一教会を巡って被害が報告されている巨額の寄付は対象としにくいためだ。
寄付として納める金額の目安が示された場合は民法上の「契約」とする判例はある。寄付の場合はその額を本人の意思に委ねたようにみせる事例が多く、事後に取り消せる「契約」に当てはまらないとの見解が根強い。法改正により被害者の救済の実効性を高める。



(飛田コメント)
 実務をしている弁護士としては、どのような法律の規定になるのか興味がありますね。法律に規定するということは、取り戻し可能な寄付行為と取り戻しができない寄付行為を明確に分けることが必要になります。その基準をどこに求めるかですが、寄付行為やその勧誘行為自体の中に、取り戻しができるものとそうでないものを分けることは、かなり難しいのではないのかと思います。
 高額の寄付というと、宗教団体への寄付、慈善団体への寄付、妻や子など家族への寄付と色々あるわけですが、寄付行為としては同じですし、勧誘行為としても、多かれ少なかれ寄付を受ける者からの働きかけがあるのでしょうから、(勧誘の強弱はあるかもしれませんが)似たりよったりではないでしょうか。そうすると、寄付を受ける客体に注目した規定になるのではないか?とも思うのですが、それは消費者契約法に規定すべきことではないですね。今後が注目です。
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 日経新聞2022年9月8日朝刊社会面の「霊感商法対策 検証できず」「消費者庁、救済策検討に壁」「有識者検討会 法改正も議論へ」との記事

 記事の内容は、消費者庁の有識者検討会で、2018年の消費者契約法の改正により可能になった霊感商法による契約取り消しについて、消費者庁が、「消費者契約法で実際に取り消すことができた件数の把握は困難で、取消権が行使された裁判例も確認できない」と回答したことについて、委員から批判が相次いだ、というものです。ある委員は、「改正時に様々な要件を付けて使い勝手が悪くなっているのではないか。」と言い、河野消費者相は、「現在は霊感商法から『寄付商法』に移行している。」との認識を示したといいます。

 ところで、2018年に霊感商法対策として、消費者契約法に盛り込まれた規定とは以下のものと思います。

第4条第3項
 消費者は、事業者が消費者の契約について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意見表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一~五〔省略〕
六 当該消費者に対し、霊感その他合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨の示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。

 確かに「そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示して」という部分は、例えば、「この石を買えば幸福になれます」とだけ告げて、不利益を告げていない場合には使えそうもないし、「確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げる」という部分は、「確実」に回避できると告げなければダメなのかという気がしますね。
 ただし、この条文にぴったりと当てはまる案件については、ほぼ被害者側の証言が証拠として重視されそうですので、使い勝手が悪いとまでは言えない印象です。
 その意味で、何故この取消権が行使された裁判例が確認できないのかちょっと不思議です。
 この記事によると、「全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は19~21年度の3年間で計3924件に上った。法改正後も被害が止まない」ということなのですが、この相談がどのような内容のものなのかちょっと興味がありますね。
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