昨日(9月10日)の日本経済新聞の朝刊の記事ですが、「司法試験合格 239人減」という見出しで、

法務省は9日、2014年の司法試験に1810人が合格したと発表した。昨年より239人減り、06年以来8年ぶりに2千人を下回った。合格率は4・2ポイント減の22・6%で、現行試験が始まった06年以降で最低だった。法科大学院を修了しなくても受験資格を得られる「予備試験」経由の合格者は163人、合格率は66・8%で、どの法科大学院よりも高かった。


と報道と報道されています。
弁護士の人数とも絡む問題なので、私としても心情的に複雑な問題なのですが、次のように考えています。

1.弁護士の人数を増加させる司法制度改革は、弁護士の経済的地位を悪化させ、不祥事を起こす弁護士を増やすとともに能力の低い弁護士を増やしたとして(弁護士内部からは)とても評判が悪いのです。
しかし、国民の側から見れば、弁護士の偏在がなくなり、弁護士のコスト(弁護士報酬)が下がり、さらに弁護士を企業や地方公共団体内部で雇用できるようになりました。法律の専門家に対するアクセスが格段に容易になり、法化社会化という面でもかつての状態よりも良くなっているのではないかと思います。
統計をとってみたわけではありませんが、私の印象では、不祥事を起こす弁護士は、最近になって経済的に苦しくなったベテランの先生方の方が相対的に多いように思いますし(したがって、どちらかというと懲戒制度の問題でしょう。)、若手弁護士の能力の問題は、我々の若いころと五十歩百歩という感じがしないでもありません。むしろベテランの弁護士にもかなり怪しい人がいますね(研修制度の問題かもしれません。)

2.弁護士の人数の増加により、(私を含め)大部分の既存弁護士の収入は減少しましたが、それは競争が始まると報酬を下げざるを得ないような付加価値の低い仕事、または方法で仕事をしているからであるように思います(もちろん、本当に社会的弱者のために、いわば手弁当で仕事をされている一部の先生を除く。)。
そもそも弁護士になったら一定の収入が保証されるかのような発想は間違いです。
クライアントから高い評価を受け、苦しい外部環境の中でも高い収入を維持している事務所・弁護士も存在しておりますので、基本的には、資格で稼ぐのではなく、良いサービスを提供して、クライアントから評価してもらって稼がなければならないと思います。

3.法曹人口の問題は、今は増加の反動で減少に向かいましたが、他業界で規制緩和が叫ばれている中で、弁護士業界だけが独占の利益を享受できるというのは一般の理解を得られないように思いますので、(弁護士法72条の問題も絡んできますが)、人数としても、いずれ増加の方向に向かうでしょう。
また、経済学的に考えると、その社会にとって最適な弁護士数は、基本的には市場原理によって決められるべき問題ですので、入口のところで制限してしまうのは適当ではありません。
したがって、私は、逆に、法科大学院を卒業すれば、基本的に弁護士資格を与えて良い(司法試験のハードルを低くしても良い)のではと考えています。
もっとも、前述のとおり、弁護士資格を持っているからといって、就職や収入が保証されるわけではありません。人数が増え、競争が起きますので、クライアントから評価されないと、食べていけない人もいるでしょうし、逆にバリバリ稼ぐ人もいるでしょう。
でも、それは他の職業でも同じことだと思います。

こういうことを言うと、自分にはねっかえってくるので厳しいのですが、私は以上のように考えています。