タグ:派遣法改正

11月28日にJIET(特定非営利活動法人日本情報技術取引所)北海道支部の情報交換会で、「労働者派遣法の改正がいつきてもいいように!」という題名で講演をさせていただきました。その内容を簡単にまとめさせていただくと、

 

(1) 労働者派遣法の改正案は、今年の春の通常国会では厚生労働省の担当者が罰則規定を書き間違えてしまったため、秋の臨時国会では、衆議院が解散になってしまったため2度も廃案になっていますが、厚生労働省内で議論が積み重ねられ、政府が重要法案として位置づけている法案なので、今回行われる衆議院選挙で与党(自民党・公明党)が過半数を取得すれば、来年年明けからの通常国会で成立する可能性が高いこと(施行は平成28年4月からか?)

 

(2) その場合、中小のIT企業にとって最も影響の大きいのは、特定労働者派遣(届出制)と一般労働者派遣(許可制)の区別がなくなり、全て労働者派遣事業として厚生労働大臣の許可が必要になることであること、また、認可の基準で問題となりそうなのは、(まだ改正案についての基準は公表されていないので正確なものではないのですが)現行の一般労働者派遣の許可基準から推測する限り、

① 基準資産額が、「2000万円×事業所数」以上であること

② 基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること

③ 事業所資金として自己名義預貯金が「1500万円×事業所数」以上であること

という財産基準であると考えられること

 

(3) しかし、現在特定派遣をしている業者については、改正法の施行日から3年間については、特定派遣を続けることができるという経過措置(猶予期間)が設けられることになっているので、それほどあわてる必要はなく、

① 基準を満たすよう頑張って、労働者派遣を継続する

② 労働者派遣は止めて、人を出す場合には請負にシフトする

③ 労働者派遣は止めて、人を出すことも止める

などの選択肢を自社の状況に応じて考えれば良いこと

 

です。

 

最近の報道を見ていると、今回の選挙で与党(自民党・公明党)が過半数を取る可能性はかなり高いようですので、ここしばらくは派遣法の改正に注目していかなければならないようです。

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今日(2014年11月13日)の日経新聞朝刊2頁に、「与党、派遣法改正を断念」という見出して、与党が、今国会における派遣法の改正を見送ることにしたことが報道されています。

政府・与党は12日、安倍晋三首相が来週にも衆議院解散に踏み切ることを想定し、今国会の法案の扱いを詰め始めた。民主党などが反対する労働者派遣法改正案の成立は見送る。


ということです。
もともと派遣法の改正案については、民主党・共産党が非正規雇用者が増えるとして反対していて、11月30日の会期末までに成立するか不安視されていましたが、ここにきて、衆議院が解散される見込みとなったので(まだ安倍首相が解散を表明したわけではないのですが・・・)、廃案となることがほぼ確定したということなのでしょう。

私としては、(個人的な事情で恐縮ですが)今月末に派遣法改正についてセミナーをすることになっていたので、どうするの?という感じであります。
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私は、中小のIT企業のクライアントが多いので、今国会で審議される予定の労働者派遣法の改正案についてとても注目しています。
というのは、これまでは、IT技術者の派遣は、特定労働者派遣事業として、届出制のもとで行うことができましたが、改正後は、一般労働者派遣事業として、許可を取得しなければならなくなり、しかもその許可の条件が中小のIT企業にとっては簡単にクリアーできるものではなく、(良いか悪いかは別にして)業界に与える影響かかなり大きいと考えられるためです(詳しくは過去記事をご参照ください。)。

で、この労働者派遣法の改正案は、今年の3月の通常国会で審議されましたが、なんと厚生労働省の担当者が、罰則規定について「1年以下の懲役」と書くべきところを、「1年以上の懲役」と間違って記載してしまったため、野党から「国会軽視」という反発があり、修正ではだめで、新らたに提出しなおすべし、として廃案になってしまいました。(過去記事をご参照ください。)

内閣(厚生労働者)としては、捲土重来を期すということで、今国会で派遣法の改正を成立を目指しているのですが、ここにきて、小渕大臣と松島大臣が辞任したことが障害となっているようです。以下、昨日の日経新聞朝刊4頁の記事から抜粋です。

野党各党は21日、小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相の閣僚辞任を受け、国会で攻勢を強めた。閣僚交代を理由に衆院本会議での法案審議に反対し、そのあおりで労働者派遣法改正案の審議入
りは28日に先送りになった。

 野党が共闘姿勢を強めた背景には、それぞれの思惑がある。民主党は派遣法改正案を廃案に追い込みたい考え。同法案は派遣社員の受け入れ期間を事実上撤廃する内容で、民主党の最大の支持団体である連合が「非正規雇用者を増やす恐れがある」と反対している。
 与党が3日を想定していた同法案の審議入りは「玉突き」で28日となり、首相が国際会議への出席で日本を離れる11月中旬前に参院で審議入りする日程は微妙となった。民主国対幹部は「与党が強行採決しない限り今国会での成立はできなくなった」と笑顔をみせた。

ん~ん。私は、労働者派遣法の改正案に賛成というわけではないのですが、あまり本質的でないことを理由に法案を廃案にするのはいかがなものかと・・・
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実は、この度、縁あって、NPO法人日本情報技術取引所(JIET:ジェット)の顧問弁護士に就任いたしました。 JIETは、会員のIT会社(システムの開発会社)が、ソフトウェア開発の案件と人材の流通を図り、技術者と仕事のマッチングをするため、ビジネスマッチングサイト運営、交流会、商談会などの開催等の活動をしているNPO法人です。会員は、なんと全国に約700社もいるのですよ。

というわけで、これまでも弊事務所は、IT会社からの相談が多かったわけですが、今後ますます増えることが予想されますので、これまで以上にIT会社の法務に精通する所存です。
で、今回は、現在、IT業界で問題となっている『労働者派遣法の改正』について簡単に説明させていただきます。

ちょっと意外に思うかもしれませんが、IT会社(システムの開発会社)では、かなり多くの会社が派遣元会社になって、他の企業にIT技術者を派遣しています。これは、自社で開発等をしたシステムの管理のために、一般の事業会社にIT技術者を派遣している場合もありますし、(IT業界は、恒常的な人手不足の状態にありますので)大手IT企業が大きな案件を受注した場合などに、中小のIT会社から、大手のIT会社にIT技術者が派遣されるということもあります。

で、これまでの労働者派遣法では、ソフト開発等も含まれる専門26業務とそれ以外に分け、専門26業務については、特定労働者派遣事業として届出をするだけで、しかも「原則1年・例外3年」という(一般労働者派遣事業に適用される)期間の制限なく、IT技術者の派遣を行うことができたのです。しかし、現在、まさに国会で審議されている改正案では、特定労働者派遣事業は廃止され、すべて派遣元に厚生労働大臣の許可が必要な一般派遣事業となり、一律に3年間という期間制限がかけられることになりました。

細かいところをいうと、①現行法の「原則1年・例外3年」という期間制限は、対象となる業務についての制限であるのに対し、改正案の3年という期間制限は、派遣される労働者についての制限であったり(したがって、派遣先企業にとっては、特定の業務について、人さえ変えれば、ずっと派遣業務にすることができるようになります。)、②改正案では、派遣労働者の保護のために、3年経過時に、派遣労働者の希望があれば、派遣先企業に直接その派遣労働者を雇うように申し入れたり、派遣元が派遣者派遣社員を無期限で雇用したり、次の派遣先を紹介したりと、雇用の安定を図るための措置を講じなければなりません(詳しい内容については厚生労働省のサイトをご覧ください。)。

ただ、IT会社にとって重要な点は、これまで届出さえすれば認められたIT技術者の派遣が、厚生労働大臣の許可が必要になったことです。そして、許可の条件として、現在の一般労働者派遣事業のように「純資産が2000万円以上あること」とか「事業資金として現金・預金が1500万円以上あること」が引き継がれる予定とのことです。そのため、そのような金銭面の許可条件を満たすことができない中小のIT会社にとっては、もはやIT技術者の派遣はできなくなるのでは?と言われているのです。

 このような労働者派遣法の改正については、いろいろと議論があるところですが、これまでのところ、業界内では、いずれ派遣事業は継続が難しくなるとして、派遣業務はやめて、自社での開発に特化しようとしている会社、一般派遣事業の許可を取るために財務基盤を強化しようとしている会社など色々と動きがあります。
ただ、改正時に、特定労働者派遣事業から一般労働者派遣事業に移行する要件を暫定的に緩める経過措置が盛り込まれるのではないか?等々の噂もありますので、業界の一般的な傾向としては、まだまだ様子見というところでしょうか。

いずれにしても、この労働者派遣法の改正については注視していく必要があります。順調に進めば、本国会で法案として成立し、平成27年4月1日から施行される予定です。
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