タグ:私的整理


私の専門分野の一つは『私的整理手続』なのですが、この分野で画期的なルールの変更が行われそうです。

それは、多数決原理の導入です。
つまり、私的整理手続は法律による手続きではないため、対象となる債権者(金融機関)の全員同意がなければ再生計画は成立しない(換言すると、同意しない対象債権者には再生計画の効力を及ぼすことができない。)のが大原則なのですが、そこに多数決原理を導入して、対象債権者の大部分の同意があれば、再生計画を成立させて、不同意の対象債権者にも再生計画の効力を及ぼすという多数決原理を導入しようという動きです。

従来、対象債権者(金融機関)の同意がないにもかかわらず、しかも強制力がある法律でもないにもかかわらず、どうして再生計画(対象債権者に債権カット等の不利益を課すものです。)の効力を同意者に及ぼすことができるのか?同意もしていない債権者に対して再生計画の効力を及ぼすとすれば、憲法第
29条第1項の定める財産権の保障を侵害するのではないか?などと言われてきました。

しかし、実務では、再生計画に同意した方が経済合理性があるというような場合にも、あの会社はけしからん式のいわば感情的な理由で、または、もっとメイン銀行が負担すべきというような主張をゴリ押しするために、再生計画になかなか同意しないというような金融機関があり、円滑な事業再生のための多大の障害となっていました。

また、諸外国を見渡すと、実は欧米諸国もまたアジア諸国でも私的整理手続に多数決原理を導入しているのが普通というような状態になっていました(日本では「全員同意」が必要ですというと、どうして日本は「全員同意」などというミラクルなことができるのだ?などと不思議がられるそうです。)。

そこで、2001年に私的整理ガイドラインが作られたときに委員会の座長を務めていた高木新二郎先生(野村證券顧問、博士、弁護士、元裁判官)が中心になって、現在、公益社団法人商事法務研究会が主催して「事業再生に関する紛争解決手続の更なる円滑化に関する研究会」が組織され、現在、「多数決による事業再生ワークアウト」が検討されています。

この研究会には学者、実務家のみならず、経済産業省、金融庁、法務省、全銀協などがオブザーバーとして参加しており、また、安倍内閣の「日本再興戦略」(改訂2014.6.14)の中にも、「私的整理を含め少数債権者の不合理な反対によって事業再生が妨げられないようにするために関連諸制度の在り方を検討する・・・」と記載されるなど、この問題は政治的な課題ともなっています。

したがって、この研究会の議論により、今後、私的整理の中にも多数決原理が導入されるということになりそうです(具体的な法改正がなされるのか等々についてはまだよくわかりません。)。

私は、このようなルールの変更には大賛成!高木新二郎先生及びこの研究会のメンバーの先生方にはぜひ頑張っていただきたいと思います。

__
(ウイズダム法律事務所は、銀座にありますが、お隣の築地にも近いです。初めてこの

建物を見たときは、このモダンな建物はなに?と思いましたが、浄土真宗の築地本願

寺でした。とても風格があっていいデザインですね。)


5月にある金融機関のご依頼で私的整理の考え方についてセミナーをさせていただきましたが、その中で、私的整理の原理原則について考えたことを記載してみたいと思います。私的整理の原理原則といわれているものの根拠を遡り、その原理原則がどれだけカチッとしたものなのか、例外が許されないのかを考えてみるというマニアックな試みです。

 

ここで「私的整理」といっても、かつてのように、裁判所の関与がないところで任意に倒産処理が行われる手続一般というような広い意味の「私的整理」のことではありません。①「私的整理に関するガイドライン」に基づく手続、②中小企業再生支援協議会のスキームに基づく手続、③株式会社整理回収機構RCC)の再生支援スキームに基づく手続、③事業再生実務家協会の事業再生ADRに基づく手続などのいわゆる「公表された私的整理手続」のことを意味しています。

 

この公表された私的整理手続は、平成13年9月に策定された「私的整理に関するガイドライン」(以下「私的整理ガイドライン」)が一番早く世に登場していますので、その原理原則を考えるにあたっては、私的整理ガイドライン策定の歴史的経緯をおさえておくことが重要です。


私的整理ガイドラインの歴史的経緯は次のとおり。
 

続きを読む

↑このページのトップヘ