少子高齢化(アクセスの負担や医療機関の充実等)や、コンパクトシティ構想(中心市街地の活性化)の観点から、今後、限られた中心市街地に多くの人々が住むために、集合住宅たるマンションの需要がさらに増えていくと予想しています。
今回は、マンションの管理費と修繕積立金(以下、併せて「管理費等」といいます。)の滞納者に対して、どのように対応していくかという点についてお話したいと思います

 

マンションは、管理費等を各区分所有者から徴収し、この管理費等によって、共有部分や敷地部分のメンテナンスが行われ、また将来的な修繕のための費用をプールしていくことになります。
管理費等の滞納者がいると、最終的に他の区分所有者が負担しなければならなくなるので、マンション全体の価値を下げることになります。「マンションは管理を買え」とよく言われますが、滞納者がいる事実だけでなく、管理組合もこのような滞納者を野放しにしているとなると、ますますマンションの価値を下げることになりかねません。
伝説のヴィンテージマンションとされる広尾ガーデンヒルズ(渋谷区)は、管理体制が抜群に良いと言われており、築36年を経過した今でも、購入希望者が後を絶たないそうです。(そもそもこのマンションに滞納者はいないとは思いますが…)仮にこのマンションに滞納者が出てきた場合には、管理組合はしっかりと対応するのでしょう。

 

さて、管理費等の滞納者に対する対応策ですが、実務上問題になった事例を紹介します。

 

①滞納者に対する水道・電気等の供給停止
水道光熱費を管理組合が集金する方式だと、管理組合がペナルティとして滞納者の部屋の水道や電気等の供給を停止することがしばしば行われます。

このような水道・電気等の供給停止について、裁判例(管理規約に、管理費等を滞納した場合には給湯設備をストップできる、という記載があるマンションの事例)では、「他の方法をとることが著しく困難であるか、実際上効果がないような場合に限って是認されるものと解すべきである」として、このような例外がない状況では、権利濫用であり、民法上の不法行為が成立するとして、損害賠償の請求が認められました(東京地判平成2130日・判時 137083頁)。

水道・電気等の供給停止は、滞納者に対する圧力として事実上の効果を発揮するとは思いますが上記のように最終手段として例外的に許容されるに過ぎないと考えられており、不法行為に当たらないとする裁判例もあるにはありますが、基本的にはNGであると考えたほうが無難であると考えます。

 

②区分所有法第58条に基づく使用禁止

区分所有法(以下「法」といいます。)第58条には、他の共同の利益に反する行為を行った場合において、区分所有者の共同生活上の障害が著しい場合等に、集会の決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上)に基づき、訴えをもって、当該行為にかかる区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる、とされています。

しかしながら、管理費等の滞納は、「他の共同の利益に反する行為」であると思いますが、裁判例では、「管理費等の滞納と専有部分の使用禁止とは関連性はない」として、法58条の請求を棄却しました(大阪高判平成14516日・判タ1109253頁)。

同裁判例では、法58条は、「専有部分で騒音、悪臭を発散させるなど他の区分所有者に迷惑を及ぼす営業活動をしている場合、暴力団構成員が専有部分をその事務所として使用し、他の区分所有者に対し恐怖を与える等の行動をとっている場合等」のための手段であると判示していますので、管理費等の滞納には、本条の使用禁止は使えないことになります。

 

このように、管理費等の滞納者に対し、上記の手段を使うことは困難であったり不法行為が成立してしまうおそれがあったりしますので、実務的には、以下の手段が考えられています。これは国土交通省が出している「マンション標準管理規約」(解説部分)においても説明がされています。

 

ⅰ法第7条の先取特権の実行(※専有部分の売却代金や専有部分の動産に対する物上代位)

ⅱ管理費等の請求訴訟(※判決(債務名義)を取得して滞納者の財産に強制執行)

ⅲ法59条による区分所有権の競売請求訴訟(※判決を取得して競売を申し立てる)

上記ⅲは最終手段であり、法第8条により特定承継人たる競落人に滞納管理費等を請求できるので、一旦滞納者を排除したうえで、新しい所有者から滞納管理費等の支払いを受けることができます。

強力ないわば外科的手段ですが、これを発動させるためには、各要件(共同生活上の障害が著しい等)を充たし、かつ滞納者に弁明の機会を与えたうえで、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議が必要なので、ハードルが高く、皆の足並みを揃える必要があります。

 

まだ物件に滞納者が居住しているので、争っている間は非常に気まずさがあり、管理組合(区分所有者)としても穏便に済ませようとする傾向がありますが、このような紛争を放置するとマンションの価値全体に影響してきますので、区分所有者全員のためにも、きちんと対応していくことが必要です。

他にも、騒音、喫煙、ペット飼育、ゴミをめぐる問題、用途違反等の諸問題もあり、マンションは様々な考えや価値観を持った多数の方々と折り合いをつけながら居住していく必要があるので(戸建てでもこれらの問題はありますが)、お互い気を付けていきたいところです。