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 もうすっかり暖かくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 訴訟や相続関係の手続きなど、法的手続きを取ろうとすると、色々な公的書類を揃える必要があります。これらの書類は、一部弁護士の方で取ることができるのですが、どのような書類であれば弁護士に取ってもらうことができるのでしょうか。
 この点は、質問される機会も多いので、この機会に代表的なものをまとめておきたいと思います。

① 住民票
 住民票は、住民基本台帳法に基づき交付請求できる書類で、現住所の市町村役場に請求します。
 住民票には、現住所や本籍地が記載されており、正確な現住所が知りたい場合や本籍地を知りたい場合に取り寄せることがあります。弁護士の業務との関係では、戸籍を取りたいのに本籍地が分からないといった場合に、まず住民票を取り寄せて本籍地を明らかにすることが多いです。

 住民票は、一定の要件を満たす場合には、弁護士や司法書士が取得することができます。具体的には、①弁護士がある事件を受任していて、②その事件の依頼者が、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある等、住民票の交付を受けるについて正当な理由がある場合に、弁護士の方で住民票を取得することができます(住民基本台帳法第12条の32項)。

 ですので、例えば、弁護士が遺産分割調停の申立てを受任して、被相続人の戸籍を集める必要がある場合に、被相続人の住民票を取得して本籍地を調べるといったことは、上の①②を満たすので、許されます。
 上の例以外でも、ご依頼いただいた事件で住民票を取得する必要が出てきたという場合には、①②の要件を満たすことが多いので、多くの場合、弁護士の方で住民票の取得が可能と思われます。

② 戸籍謄本・抄本
 戸籍謄本・抄本は、戸籍法に基づき交付請求できる書類で、戸籍に記載されている人の本籍地の市町村役場に請求します。
 戸籍謄本には、同一戸籍内の全員について、氏名等の他に、戸籍事項(戸籍の編纂日等)や身分事項(出生・婚姻等に関する情報)が載っているため、特定の人の家族関係を明らかにしたい場合に使用されることが多いです。

 戸籍謄本・抄本についても、住民票の場合とほとんど同様で、①弁護士がある事件を受任していて、②その事件を処理するにあたって必要がある場合には、弁護士の方で戸籍謄本・抄本を取得することができます(戸籍法第10条の234項)。

 ですので、戸籍謄本・抄本も、事件を依頼していただいた中で取得する必要が出てきた場合には、ほとんどの場合、弁護士の方で取得することができることになります。

③ 固定資産評価証明書
 固定資産評価証明書は、地方税法に基づき交付請求できる書類で、不動産の所在する市町村役場に請求します。
 固定資産評価証明書には、不動産にかけられる税金の計算根拠となる不動産の評価額が記載されているため、その不動産の評価額を知りたい場合に使用されることが多いです。

 固定資産評価証明書に関しては、取得できる場合が法律と政令によって定まっているのですが、地方税法施行令第52154項において、「民事訴訟費用等に関する法律別表第一の一の項から七の項まで、一〇の項、一一の二の項ロ、一三の項及び一四の項の上欄に掲げる申立てをしようとする者」は、固定資産評価証明書を取得できるとされています。これは、ざっくりまとめてしまえば、当該不動産に関する民事訴訟を提起する場合を示しています。
 全くの第三者である弁護士が固定資産評価証明書を取得できる場合で当てはまりそうなのは上記のみですので、固定資産評価証明書に関しては、当該不動産に関する民事訴訟を提起する場合に限って、弁護士も取得することができるということになります。

④ 課税証明書
 課税証明書は、地方税法に基づき交付請求できる書類で、発行年の11日時点の住所地の市町村役場に請求します。
 課税証明書には、対象者に住民税がいくら課税されたのかが記載されているのと同時に、(自治体によって違いがあるのですが、多くの場合、)課税対象となる収入や所得の金額が記載されているため、課税対象者の収入・所得金額を知りたい場合に使用されます。

 課税証明書に関しては、法律で「地方団体の長は、…(課税)証明書の交付を請求する者があるときは、その者に関するものに限り、これを交付しなければならない。」(地方税法第20条の10)と定められており、弁護士等の完全なる第三者がこれを取得することはできないことになっています。
 したがって、課税証明書に関しては、依頼された事件の処理に必要な場合でも、弁護士の方で取ることはできないので、課税された本人か、本人と同一世帯の親族であれば申請を受け付けている自治体も多いため同一世帯の親族に取得してもらう必要があります。

以上、弁護士の公的書類の取得について、代表的なところをまとめてみました。
弁護士その他の士業にご依頼いただく場合には、ぜひご参照いただければと思います。

夫又は妻が相手方(つまり妻又は夫)と離婚したいのに、話し合っても離婚の合意に至らない、つまり協議離婚ができない場合、それでも離婚したければ、家庭裁判所で離婚調停をしなければなりません(調停前置主義。家事事件手続法257条)。調停でも離婚の合意ができず、それでも離婚したければ、離婚訴訟をすることになります。
 

ところで、離婚調停では、調停を申し立てられた相手方(夫または妻)が、おうおうにして調停期日に出頭してくれない、ということが起こります。そもそも、任意の話し合いで離婚に応じなかった相手方ですので、裁判所における話し合い(調停)も拒否するというのが主な理由のようです。調停では、調整役の調停委員が、申立人と相手方の間に入って話し合いを進めてくれますが、最終的に、申立人と相手方の双方が、離婚に合意しなければ調停は成立しませんので、相手方が期日に出頭してくれなければ、手続き自体が無駄に終わってしまうことになります。

 

この点、法的に説明すると、一般的に、調停を申し立てられてた相手方には、調停に出頭する義務があると解釈されており、正当な理由がなく出頭しない当事者に対しては、家庭裁判所が5万円以下の過料(罰金みたいなものです。)を課すことができます(家事事件手続法第258条第1項、第51条第3項)。しかし、私の経験上、家庭裁判所が、この過料の制裁を発動したケースを知りません。おそらく、裁判所としては、そこまで「おおごと」にするよりも、離婚訴訟の方に移行してくれということなのでしょう。裁判所によっては、書記官から相手方に電話をするなどして出頭を促していただけるときもありますが、裁判所によって運用はまちまちであり、また、そのような電話があっても出頭しない相手方もいます。

 

では、そのような場合はどうするか?というと、結局、調停を不成立(不調)にさせて、速やかに、離婚訴訟を提起するしかないと思っています。離婚訴訟では、被告が欠席していたとしても、手続きを進めることは可能であり、裁判官が、原告提出の証拠により、「離婚事由」(民法第770条第1項)があると判断すれば、離婚の判決を得ることができます。

ちなみに、少々専門的になりますが、離婚訴訟では、通常の訴訟とは異なり、被告(相手方)が答弁書も提出せずに欠席した場合に、訴状に記載した原告(申立人)の主張した事実について、認めることが擬制されるという擬制自白の制度はありませんので(人事訴訟法第19条第1項)、被告の不出頭が見込まれるときでも、離婚原因(民法第770条第1項に規定されている不貞行為、悪意の遺棄など、婚姻関係を継続しがたい事由のことです。)について、しっかりした証拠を提出しておく必要があります。

 

というわけで、結論としては、相手方が調停に出頭しなくても、調停を不調にして離婚訴訟を提起し、最終的には訴訟で「離婚事由」の存在を立証することで離婚することができます。

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