勝手に離婚届を提出される、そんなことがあるの?

と思うかもしれませんが、実は、実務上、ままあることなのです。

もちろん、夫又は妻の署名を偽造して離婚届を作成して、役所に届ければ、私文書偽造罪及び同行使罪(刑法第159条、第161条)ということになってしまいますので、例は少ないでしょう。
しかし、夫婦げんかをした際に、離婚届に署名押印して相手に預ける、というようなことがあり、後で離婚の意思がなくなっても、その離婚届が役所に提出されてしまうということは少なからずあります。

そのような場合、離婚は成立するのでしょうか?

いえいえ、ご安心ください。

離婚は、①離婚するという意思(離婚意思)の存在と、②離婚届の役所への提出の2つが成立要件となっており(民法第763条、第764条、第739条)、しかも①の離婚意思は離婚届提出の時に必要とされていますので、離婚届提出の際に、離婚意思がないのであれば、離婚は成立しません。


しかし、まだまだ問題はあります。

離婚届を受理する役所の担当者は、形式的に書類を審査するだけで、いちいち夫婦双方に離婚意思があるかなどということはチェックしないで、離婚届は受理されてしまします。つまり、戸籍上は、離婚意思がなくとも離婚したことになってしまうのです。

これを元通り回復するのは、まず離婚無効の調停を申し立てなければなりませんし、調停から審判に進んで、離婚無効の審判が出たとしても、相手方から異議がでれば、今度は、離婚無効確認の訴えという裁判を提起しなければなりません(人事訴訟法第2条第1号)。

このように、いったん戸籍が変わってしまうと、それをもとに戻すには大変苦労することになります。

そこで、もし離婚届に署名押印したけれど、離婚する気持ちがなくなったというような場合には、役所の戸籍課に「離婚届不受理申出」という書面を提出しておく方法があります(戸籍法第27条の23項)。この書類を提出しておけば、離婚届は受理されないので、ひとまずは安心でしょう。

ではでは。