このケースでは、東京地裁判決東京高裁(知財高裁)判決の結論が分かれ(現在、最高裁に上告中)、マスコミ等でかなり話題になりましたが、私も少し考えたことがありますので、このブログに書いてみたいと思います。

東京地裁判決と東京高裁判決で、判断が分かれたのは、DeNAの釣りゲームの「魚の引き寄せ画面」が、先行するグリーの釣りゲームの「魚の引き寄せ画面」を翻案(ほんあん)したものであり、グリーの著作権及び同一性保持権を侵害していないか?という争点についてです(引き寄せ画面については、1審判決から引用した下の画面をご参照ください。なお、原告作品とはグリーの作品、被告作品とはDeNAの作品のことを言います。)。

グリー 判例


ここで「翻案」(ほんあん)とは、知財高裁判決の言葉を借りると、
既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が毀損の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為

のことを言います。

そして、また知財高裁の言葉を借りると、

思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創造性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は、既存の著作物の翻案に当たらない(最高裁平成11年(受)第922号同13628日第一小法廷判決・民集554837頁参照)。

ということになります。

ここでの論点は2つ。

① DeNAの「魚の引き寄せ画面」とグリーの「魚の引き寄せ画面」の共通する部分は、アイデアの部分にあるのか?それとも表現の部分にあるのか? (なぜなら、著作権法の保護対象は、表現であり、アイデアは保護されないから)

② (上記①で表現の部分にあるとして)DeNAの「魚の引き寄せ画面」とグリーの「魚の引き寄せ画面」の共通する部分は、表現上の創造性が無い部分にあるのか?(なぜなら、著作権の保護対象は、単なる表現ではなく、創造的な表現であるから)

という点です。

そして、判決では、色々な要素が比較されていますが、最も重要だと思えるのは、「水中に三重の同心円を表示する」という点であると考えられます。

続きを読む